2024年7月22日(月)

Wedge REPORT

2015年7月31日

キャリアを考える起点が就活でいいのか

 スケジュールの後ろ倒しも、就職ナビによるエントリー煽りの軽減も、過熱する一方だった就活を適切に緩和して、大学を本来の目的である学びの場に戻したなら喜ばしいことだ。

 都内の有名私立女子大に通う木村紀子さん(仮名)に、「学修時間」は確保できたか尋ねると、「最悪ですよ」という答えが返ってきた。「卒論のため海外や地方に調査に行こうと思っても、だらだら就活が続くから、アポイントを取る時間すら確保できないんです」。

 政府や経団連が掲げた、後ろ倒しの最大の目的「留学等の推進」については、「達成された」とする声が多い。最も有名な留学生向け就活イベント、ボストンキャリアフォーラムを主催する前出のディスコの夏井社長は、「留学生が帰ってくるのは6月末ごろ。これまでは秋採用しか受けられなかった。国内学生と同じスケジュールで競えるメリットは大きいはず」と語る。

 しかし、哀しいかな、今年の方向性が今後も実質的な意味をもって維持される見込みはほとんどない。倫理憲章を守った企業は、青田刈りに走った企業に比べてやはり不利であり、エントリーの仕組みを見直したリクナビは失速したからだ。「初年度だから守る、と言った企業は多い。当然、今年の反省を踏まえて、各社前倒しし、水面下の活動を強化するだろう。就活が過熱した方が儲かる人材業界も、あの手この手で煽るだろう」(業界関係者)。

 「企業がルールを決めるのは無理がある。米国では、トップ校がこの時期までは絶対に学生に接触するな、破ったら学内での活動を禁止、と決める。力のない大学はそんな宣言はできないが」と、夏井社長は語る。

 「海外の学生を面接するとキャリア意識の高さに驚かされる」という人事担当者の声はよく聞かれる。日本の学生は就活が始まってからようやく自分のキャリアを考える。キャリア意識の軸が形成されていないから、まず説明会、なるべく広くエントリーしよう、エントリーシートの書き方は……と、人材業界の仕掛ける、一律的な就活ムーブメントに乗っかることしかできない。キャリア教育を施す責任がある大学の側は、ノウハウもなく、人材業界の営業マンに委託するのが関の山だった。

 折しも、「一部のトップ校を除いてほとんどの大学は職業訓練校になるべき」という冨山和彦氏(経営共創基盤CEO)が注目されているように、少子時代を見据えた大学選別の議論が中央教育審議会などで進められている。

 今年のドタバタ劇を経て、倫理憲章は空文化していくだろうが、日本の学生のキャリア意識が高まらないという本質的な課題は残されたままだ。キャリア教育を就活に任せきりにしてきた大学の側にボールは返される。

  
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◆Wedge2015年8月号より

 


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