出典:Michael O'Hanlon & Kelly Sampier,‘The State of African Security’(National Interest, July 31, 2015)
http://www.nationalinterest.org/feature/the-state-african-security-13459
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均衡のとれたアフリカ概観です。アフリカは引き続き重要な課題を抱えているものの、多くの国で民主化や経済発展の面で進展があります。高い経済成長を達成する国も増えてきました。
アフリカの国際安全保障上の重要性は、三つのことを背景に、増大しています。第一は、対テロです。過激派がアフリカに浸透、アフリカを聖域あるいは攻撃準備地域として使用するようになってきています。今回オバマ訪問でも対テロ協力は最重要課題の一つでした。スーダンは従来から過激派の聖域となってきましたし、ソマリアにはアルカイダ系のアル・シャバブがいます。
リビアでは今やアルカイダ勢力が跋扈し、更に重大なことに、最近はISの浸透が指摘されています。アルジェリアやリビアの奥部は、マリやナイジェリアの北部とつながり、アルカイダ系過激派が活動しています。ナイジェリアは、人口の約7割がイスラム教徒で、アフリカ最多のイスラム人口を擁する国家で、ボコ・ハラムが活動しています。
第二に、テロの温床となる破たん国家を作らないことが重要になっています。それには、政治的安定を図り、経済発展を助けることが重要です。政治指導者の選挙を通じる定期的な交替も不可欠である。アラブの春は、そのような政治メカニズムが機能せず、権力者の長期執政や雇用の停滞があったので、不満が爆発したといえます。
第三の背景として、この記事は明示的には言及していませんが、中国のプレゼンスの増大があります。中国は植民地闘争の時代からアフリカと緊密です。今や、開発支援の他、資源を求める投資や貿易の分野で存在感を増しています。中国は多くの首脳達を定期的にアフリカに派遣し、人の緊密化を図っています。直近では、8月8~10日に、王毅外相が西アフリカのシエラレオネ、リベリア、ギニアを公式訪問しています。アフリカの側では利益を最大化すべく米中を天秤にかけるような姿勢や、最近では対中反発や警戒心も出てきています。なお、オバマの今回訪問につき、中国メディアは対中対抗策として批判しています。
日本は、アフリカでは、量的にはともかく、悪くない役割を果たしてきました。1993年に日本が立ち上げたTICAD(アフリカ開発会議)は外交上のヒットでした。今後とも、ODAや民間投資の強化、人的関係の強化に一層努めて行くべきでしょう。他方、今まで我が国の対アフリカ外交の顔でもあった森喜朗元総理や元UNHCRの緒方貞子氏の後を継ぐ人物を早く見つける必要があります。
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