WEDGE REPORT

2015年9月5日

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 難民たちが比較的容易に各国を移動できるのも、EU加盟28カ国の域内の移動の自由を容認した「シェンゲン協定」があるからだ。各国の国境でパスポートなどを提示する必要がなく、EU統合の最大の成果の1つと称賛されるシステムである。

 もう1つ、難民問題でシェンゲン協定と並んで重要なのが「最初に到達した国で難民申請」という規定だ。この規定に従えば、ギリシャやイタリアで難民登録をしなければならないが、難民らはドイツやスウェーデンなど将来的な生活の保証が見込める国以外に定住することを嫌う。だから途中の通過国で拘束されることを避けながらドイツを目指すのだ。ここに密航業者が介在する余地が生まれる。安全に目的地まで運ぶというのがうたい文句だ。

3万人が密航ビジネスに関与

 ユーロポール(欧州警察機構)当局者らによると、難民の密航ビジネスは今や数十億ドルの規模にまで膨れ上がり、ドラッグや武器の密輸を手掛けていた古参のギャング組織もカネになる密航業に手を染め、今や本業になっている、という。ギリシャだけでも200を超える密航組織が乱立し、米紙によると、欧州全体でざっと3万人が密航ビジネスに関わっているようだ。

 カネのある難民には偽造旅券、身分証明書なども取りそろえ、チャーター機でトルコやギリシャから直接スウェーデンに運ぶケースもある。この場合は1人100万円以上の密航料が必要。しかし裕福な難民は少なく、国境ごとになけなしのカネを前金で支払って車で運ばれる。難民の90%が部分的であっても密航業者に依頼しているとされる。

 密航業者を見つけるのはフェイスブックが多い。そこにはアラビア語で、料金、日程などの条件が明示されており、ネットを通して接触するのが一般的だ。しかし、当然のことながら密航業者の大半が元々は犯罪組織であり、車に乗ったものの、ハンガリーの森に捨てられ身ぐるみはがされる難民もいる。

 難民たちが殺到しているハンガリー・ブダペストの東駅では、こうした難民を食い物にする密航業者が甘い言葉でオーストリアまで連れて行く、と声を掛けている。ある難民の一団は、業者の誘いに応じて窓のないバンに乗せられたが、置き去りにされたところは、国境検問所に似た門があるブダペスト郊外のショッピング・センターだった。

  
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