対談

2015年9月29日

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木下 やっぱり現場で事業をやった人間が、ノウハウを体系化して発信することが重要なんだと思います。自転車と一緒で、最初から乗れる人なんていない。乗って体が覚えるから、乗れるようになる。乗った人が次に乗る人にそのコツを発信と共有をしていく、この連鎖が今の地方には必要なんだと思います。

久松 そういうことだよねえ。発信と共有が重要なミッションだというのは、すごく共感します。それがないと、まやかしのタイムマシン商法を許すことになりますから。

木下 これを主体的に行わないと、また変なコンサルがやってきて、地域特性も圏域人口も無視して「久松農園と同じシステムをあなたの村でも作りましょう」みたいなデタラメ提案をしてしまうわけです。それで知らないところで勝手に予算つかって挑戦し、失敗して「久松モデルはダメだ」といった結論まで流布させたりする。そうさせないためにも、ノウハウや事例の共有化が必要なのだろうと思いますが、それは行政がどこかに発注してやることではなく、実践者側が主体的に行うことが必要なんでしょうね。

久松 ラクしてうまくいく時代なんて洋の東西を問わず、歴史上存在しなかったのに、たまたま日本では戦後の数十年がそうだったから、それが常態なんだと見誤っているだけなんでしょうね。

木下 そうですね。でも、最近は地域活性化の分野では、少し違った雰囲気も感じているんです。公的資金による支援を断る地域も出てきたり、小さいけど変化が現れている実感があります。

 日本の地方は巨大すぎるがゆえに、そう簡単に潰れないし、潰せない。だからこそ、過去の成功モデルのまま突き進んで、じわじわと没落貴族化していく。そうならないためには、過去の成功という大きな船から乗り換えられる、小さな船を作っていくことが大事なんだと思います。でもまだまだ「大きな船こそ安全だ」と従来とは異なる仕組みの小さな船を潰してしまったりする。いつまでも乗り換えられる船は作れないまま、老朽船になっていく……。

久松 そうですよね。もう全員が乗れる大型船を作るのは無理でしょう。

木下 僕も無理だと思っています。非効率でも大きければいい、というのではなく、効率的な小型船に分散していくことが大切です。

 これは地方分権などにもいえることです。いつまでも国主導で一元的にやるというのは、戦後成長の終わりと一緒に終わりになっていればよかったと思うんです。地方自治の責任もとらせないから、無責任な経営が続く。たとえば九州と東北がガチの競争をする関係であれば、もっと地域ごとに教育も変わるだろうし、空港港湾の活用も変わるでしょう、産業集積に対する考え方も変わっていくと思うんです。失敗しても成功しても、いつかは大型船「日本丸」に助けてもらえるという依存心こそが、船そのものを蝕んでいってしまっていると思います。これは地方だけの問題ではなく、日本の社会全体につきつけられている課題だと思っています。

久松 その時に、一艘ごとの設計と、「日本丸」の設計思想との整合性なんか、どうでもいいんだよね。「ほかの船と同じようにしないと不公平だ」とか、どうでもいい。「10人しか乗れないけど強い船なんだ」と信じて作るしかないんですよね。

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■対談:木下斉×飯田泰之(執筆:柳瀬 徹)
■インタビュー:熊谷俊人(執筆:柳瀬 徹)
■現地レポート(取材・執筆:磯山友幸)
■コラム(執筆:原田 泰)

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