アフガニスタンと国境を接する国々の領域内において、テロ組織及び過激主義組織の危険が現実に高まっています。しかも、アフガニスタン領域内の既知の組織に加え、いわゆるイスラム国が影響を拡大していることで、その脅威は深刻化しているのです。この組織の活動範囲は、イラク及びシリアの国境を越えて遠くまで及んでいます。テロリストたちは大量処刑を行い、カオスと全人民の貧困をもたらし、文化財や宗教的聖物を破壊しています」
14年に渡る駐留を経ても西側はアフガニスタンを安定化することはできず、あまつさえ「イスラム国」の影響さえ及びつつある、したがってロシアを中心とするCSTOの強化を図らねばならないというロジックである。
ただ、このようなロジックが今回のタジキスタンにおける襲撃事件と直接結びつくかどうかはもう少し踏み込んだ検討を要する。
9月18日にタジキスタン最高検察庁が発表したところでは、ナゾルザダ国防次官はタジキスタン・イスラム復興党(IRPT。これは中央アジアで唯一のイスラム政党である)指導部の指示を得て今回の襲撃に及んだことになっている。IPRTはタジキスタン内戦における反政府勢力の中核政党で、内戦終結後の1998年に合法化されていた。
イスラム潰しで思惑一致
タジキスタン政府の主張を裏書きする
しかし、同党は議席わずか2議席の弱小政党に過ぎない上、現在は政権打倒を目指す訳でもなく、穏健路線を歩んでいる。IRPTが政府機関攻撃を画策したとすればあまりにも脈絡がなく、国民の広範な支持を集めているわけでない同党が蜂起しても成功の見込みは薄い。
実際、ナゾルザダの蜂起は一過性に終わり、逃亡後、治安部隊によって殺害されるという幕切れを迎えた。ナゾルザダ自身がこのような行動に出た背景はまだはっきりしないものの、これを奇貨としてタジキスタン政権側がIPRTの一掃を図ろうとしている、というほうがしっくり来るように思われる。
一方、プーチン大統領がタジキスタン政府のこうした主張を裏書きする演説を行うのは、それがロシアの利益にも叶うためと考えられる。
第一に、旧ソ連諸国を「勢力圏」と見なすロシアは、CSTOを通じて部分的にではあるが旧ソ連への軍事的影響力を確保しようとしてきた。その際、国際的にも対内的にも最も支持を得やすい大義名分がイスラム過激派の脅威である。