未婚大国ニッポン~“絆”のゆくえ 「まだシングル、ずっとシングル」

2015年10月5日

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“絆”は後からついてくるもの

 

 「未来」については現時点では確約できるものではないので、「信じられるか、どうか」ということになる。たとえば、夫婦関係でいうなら、同棲よりは法で認められた夫婦のほうが、「未来も夫婦である可能性が高い」と「信じられる」とは言えるだろう。

 そういう意味で言うと、“絆”には、「時間・空間」「思い」の共有に加えて、「未来に続くかの信頼性」のようなものも必要かもしれない。

 ……と、ここまでを書いてきて、ようやくリンクできたのだけれど、小野塚さんのいう“分散型”とは、「時間・空間」を共有と「思い」の共有をあえて分けることで、最終的に両方を叶えようとする「方法」の一つになりえないだろうか。

 つまり、一般的な考えでは、「思い」がないと「時間・空間」は共有できない気もするが、「思い」を先に求めると、苦しくなることはある。たとえば、婚活をしている人が、理想の人に出会えないのでずっと一人でいるというような。

 しかしこの2つの要素をあえて分け、「時間・空間」の共有を先にすることができれば、「思い」はあとからついてくる場合もある。たとえば、同じ部活を選んだ者同士が生涯の親友になったり、偶然、職場が一緒になった同僚と結婚することになったり。

画像:iStock

 

“利害”があるからスタートできる

 

 そして大人になると、「職場」以外で「時間・空間」を共有する人を作るのは難しい。でも、彼の言う「利害」という概念を持てれば、関係をスタートすることは容易になる場合もあるだろう。

 たとえば、「ノートを借りたいから優等生に近づいた」とか、「お醤油を借りたからお隣さんとあいさつするようになった」とか。その結果、関係が築かれるのならば、それはそれで“あり”なのではないか。

 ……などと考えていたときに、玄関でガラリと戸が開く音がして、住人の一人が帰ってきた。

 彼女は台所に立ち寄ると、扉越しに小野塚さんに話しかけ、しばらく、言葉を交わしていた。その後、小野塚さんは立ちあがり、彼女の近くまで行くと、彼女を伴って居間に戻ってきた。

 

 利害という名の“大義名分”

 

 「住人の○○さんです。お2人も話が合うと思いますよ」

 彼が紹介してくれたのは、会社のほかにNPOに参加しているという女性で、簡単に自己紹介をすると、「今から出かけるので、またゆっくり」と言って、慌ただしく出て行った。

 短いやり取りではあったが、彼女と小野塚さんの間に流れていた“空気感”に、「これが彼の意図した“距離感”か」と感じるものがあった。

 家族……では、確かにない。

 恋人でもないし、同僚でもない。

 だけど、毎日、いくらかの時間を同じ空間で一緒に過ごし、顔を合わせたり、言葉を交わしたりする。

 自分の予定を細かく話さないし、未来も一緒かというと、「わからない」。

 関係を始めた時点では「気が合っていた」わけでもないし、そもそも知り合いですらなかった。 

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