「留保付き」の非親告罪化へと
TPP交渉の大筋合意では、著作権侵害は非親告罪になるとされました。ただし重要な留保が付いています。
今回発表された大筋合意の内容には、著作権侵害について、「故意による商業的規模の著作物の違法な複製等を非親告罪とする。ただし、市場における原著作物等の収益性に大きな影響を与えない場合はこの限りではない。」とされています。
まず、著作権侵害が非親告罪となるのは、「故意による」場合に限られます。「偶然似てしまった」「権利者の承諾を得ていると勘違いしていた」など過失による場合は非親告罪の対象となりません(なお、このような場合、そもそも犯罪に当たらないことがほとんどです)。
また、非親告罪にあたるためには「商業的規模の複製等」であることが必要とされており、かつ、「市場における原著作物等の収益性に大きな影響を与えない場合」には非親告罪とならないとされています。
例えば、会社内部のプレゼン資料に誰かの写真を無断使用したような場合は「商業的規模」ではないと思われますので、著作者の告訴がなければ訴追されないということになりそうです。あるいは、個人が、趣味の範囲で漫画やアニメなどのキャラクターを使った同人誌を作り、限られた部数を実費程度の価格で販売するような場合は、「原著作物(つまりオリジナル作品)等の収益性に大きな影響を与えない」といえそうですので、非親告罪の対象から外れる可能性が大きいと思われます。
TPP大筋合意により、今後、過度な取締りによる表現活動の委縮を招くことなく、海賊版の販売といった悪質なケースをスムーズに取り締ることができるようになることが期待されます。
難しい「線引き」
とはいえ、TPPはようやく大筋合意に至った段階に過ぎません。国内での著作権の取扱いが変更されるまでには、TPP協定が正式に成立した上で、国内法の改正を待つ必要があります。また、実際には「商業的規模」や「収益性に大きな影響を与えない」といった要件の具体的な線引きをどこにするかは難しい問題でしょう。
期待されているような効果が本当に得られるような法改正がなされるかどうか、今後の動向には引き続き注目する必要がありそうです。
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