原因を見ると、17件(57%)が線路の不具合によるもので、残り14件が列車の車輪の不良、衝突を含む人的災害となっている。
2013年の1年間だけで、列車事故により流出した原油は115万ガロン(約485万リットル)で、これは米国のそれ以前の40年間に起きた陸上輸送中の原油流出総量を上回る。さらに13年には、カナダ国内でもノースダコタからカナダに輸送中の列車事故単独で150万ガロンが流出、この事故では爆発が起きて47人が犠牲となった。
米鉄道協会によると、2013年に列車輸送された原油は40万車両分、輸送総量は115億ガロンだ。つまり99.99%の無事故率となり、協会側は「鉄道輸送は安全」との見解を示している。
しかし、1タンク当り2万8800ガロンを搭載した車両を80から100両連ねる、という輸送はこれまでの米国では未知の分野だ。2013年に11件の事故が起こり、米国のシェールオイル生産業者、連邦鉄道規制局、鉄道協会が会談を行い、より安全なタンカー車両のデザイン、列車の速度制限、レール点検などを協議した。にもかかわらず、2014年の事故は12件、15年には7月までですでに8件の事故が起きている。
問題は列車全体の重量で、わずかなレールの歪みが重大な事故につながる可能性がある。連邦鉄道規制局は「鋭意調査中」というが、「長大な貨物輸送ルートの中からレールの問題を見つけ出すのは、藁の山から針1本を探し出す困難さを伴う」ともコメントしている。
幸いにもこれまでの事故は市街地を避けた郊外で起きている。しかし、これが大都市の中で起きたら、間違いなく大惨事につながるだろう。現に、ノースダコタから東海岸への輸送列車が通過するシカゴでは、原油の列車輸送に対する反対運動が起きている。
米鉄道協会は今年に入り290億ドルを費やしてレールのアップグレードを行った。しかし老朽化した鉄道網の全てを新しくするのは数年では不可能だ。また、事故原因の中で最大のもの、と見られているのが「ワイドゲージ」問題。2本のレールの間隔が、列車重量により、特にカーブ地点で広がってしまう、というものだ。わずか7センチほど軌道が広がっただけで脱線事故につながる可能性がある。
シェールオイル、ガスは今後米国の貿易赤字解消につながる存在として期待を背負っている。それだけに、今後輸出が増えることを見込んでも安全な輸送は緊急の課題でもある。今後は鉄道規制局だけではなく、米運輸省を含めた事故解明、防止への努力が必要となりそうだ。
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