世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年11月2日

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上記論説で、クリングナーは、朴大統領が南北統一を外交戦略の中心に据えていると言っていますが、未だ統一問題が韓国、そして日本において、具体的外交政策の課題になっているとはいえず、したがってクリングナーの議論も、政策論議というよりは知的訓練というべき性質のものです。それはそれとして、論説はいくつかの重要な点に触れています。

南北統一に向けたシナリオとは

 一つは、統一のシナリオです。シナリオはいくつか考えられますが、クリングナーは韓国主導で、しかも軍事作戦を経ての統一を予想しています。その際、在日米軍の出動が考えられると言っています。ここは統一のシナリオがどのようなプロセスを取りうるのかを論じる場ではありませんが、一つには中国ファクターがあります。これまでは、韓国主導の統一には中国が反対するだろうと言われてきました。中国の国境まで米国の影響力が及ぶのを嫌うからです。しかし最近では、中韓の接近が見られます。

 ただ、中国が韓国主導の統一に反対しないためには、韓国が米国との関係を再検討する必要があるでしょう。それは日米両国にとって望ましいことではなく、統一との関係で韓国が中国との関係をどう考えていくのか、注視する必要があります。

 統一国家が北朝鮮の保有する核兵器を廃棄することが、統一の必須の条件です。韓国は統一後、労なくして核保有国になる誘惑にかられるかもしれませんが、統一国家が核保有国になることは、日本、米国のみならず中国も許せないでしょうし、国際社会も認めないでしょう。統一国家に核についての選択肢はありません。核の廃棄については、アパルトヘイト廃止後の南アフリカ、ソ連崩壊後のウクライナなど、前例があり、対処に問題はないでしょう。

 次に統一に際しての日本の資金協力の問題があります。統一国家は、1965年の日本の対韓経済協力を念頭に、日本に対し北の経済開発に関し、多額の資金協力を求めてくるでしょうし、日本も基本的には協力すべきです。金額は交渉されることになりますが、協力の方法については、統一国家が、無償は言うに及ばず、円借款に関しても日本の基準に合わない(援助受け入れ国の状態を卒業している)ことが予想され、いかなる形の資金協力が可能かを検討する必要があります。

 朝鮮半島の南北統一問題は、日本と東アジアの安全保障に重要な影響を与えるもので、日本も当然大きな関心を持ちます。日本は統一問題で積極的な役割を果たす立場にはありませんが、統一問題が現実味を帯びてくる段階で、統一のプロセスでの軍事紛争への懸念、統一後の核の廃棄の必要性、などにつき見解を述べるとともに、統一に際ししかるべき経済協力をする用意がある旨を明らかにすべきでしょう。

  
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