映画「ATOM」公開記念 特別企画

2009年10月20日

»著者プロフィール

 なぜ、アメリカにアニメを売り込もうと思われたのですか?

「当時は、日本のテレビ局もまだ開局して間もなかったし、アメリカから輸入した番組をゴールデンタイムに放送するような時代だったんだ。『ローハイド』とか『パパは何でも知っている』とか。日本の番組をアメリカに売ろうなんて誰も考えていなかったけど、僕は、アメリカと対等にやれるとしたら、アニメーションくらいしかないと思っていた。当時の日本は発展途上国だったし、日本人が演じる劇は見てもらえないだろうけど、アニメーションは無国籍だからいけるんじゃないか、と」。

 自らマネジメントに携わってきた経験があればこそ、日本のアニメーションが持つ可能性を冷静に見つめることができていたのかもしれない。

 英語が堪能で現地に詳しい鈴木国際部長を連れて渡米すると、まずは、アイ・ジョージ氏の夢を叶えるため、カーネギーホールに向かった。「行ってみて初めてわかったんだけどね。カーネギーホールは貸しホールだったんだ。ただし、品格を落とすようなものはやらせてもらえない。誰にでも貸してくれるってわけじゃないんだ」。

 初めてのアメリカでの営業はさすがに緊張して臨んだが、アイ・ジョージ氏の熱意が相手に伝わり、OKをもらうことができた。

アメリカでの「体当たり営業」

 気分を良くした一行は、そこから『鉄腕アトム』の売り込みへと動き出す。アメリカの3大ネットワーク(ABC、CBS、NBC)にそれぞれ電話をかけたが、担当者へのアポイントは思ったよりスムーズに進んだ。「日本からアニメーションを売り込みに来たのは初めてだ。面白そうだからぜひ話を聞きたい」と興味を持ってくれたという。

 そして、1日で3社を回る強行スケジュールが敢行された。持参したフィルムには字幕がないので英文で書いた筋書きを渡し、映像を流しながら解説を加えた。久里洋二氏らのフィルムは「高級すぎる」という理由で興味を示されなかったが、『鉄腕アトム』については、3社とも「素晴らしい、面白い!」という反応が返ってきた。

 翌日、再度3社を訪問すると、もっとも積極的にアプローチしてきたのはNBCだった。

「『すぐにでも契約したい』と持ちかけてきたんだ。あまりに真剣で唐突だったから、逆にこっちの心の準備ができてなくて、『ちょっと待ってくれ』って……。そりゃあ、深呼吸する間くらいほしいよね」。

 NBCの熱心な態度に感動した藤田氏はその日の午後、NBCと仮調印を結んだ。

関連記事

新着記事

»もっと見る