さらにホンダは、今年9月末には電子部品の有力メーカー新電元工業の増資を引き受けて、持ち株比率を約2%から一気に約13%に高めて筆頭株主となった。新電元はHVの主要部品であるDC-DCコンバータを手掛けており、これを機に新電元はホンダと一体となってHV用DC-DCコンバータの開発・製造などに取り組んでいくものとみられる。「これまで新電元はトヨタとも取引関係があったが、今後はホンダとの取引にシフトしていくのだろう」(部品業界関係者)。
こうしたホンダの積極策に対して、元々は系列色の強かったトヨタ系部品メーカーでも集約による開発力の強化を背景に新たな部品開発に力を入れている。既に内装品のトヨタ紡織や、ジェイテクト、アイシン精機などからブレーキ部門を取り出し集約したアドヴィックスなどが誕生している。
ターゲットは当然のことだが、電動化。トヨタ紡織では室内空間の有効利用につながるシートに収納できるワイヤーハーネスの開発などを始めており、HV・EVをテコにビジネス領域は広がろうとしている。
部品メーカーに焦り 危機が好機になるか
一方、「車からエンジンが無くなる」ことに多くの部品メーカーは危機感を募らせている。自動車はパワートレイン関連部品だけで約1万5000点にも上るが、EVになると5分の1程度に減るといわれている。大手ベアリングメーカー、NTNの鈴木泰信会長も「EVになると車に使用されるベアリングが急減する。これからは従来とは異なった発想で開発を進める必要がある」と言ってはばからない。
しかし、危機感を強める一方で、部品メーカーは変化に対し柔軟性を備えている。例えば燃料噴射装置。かつては機械式のキャブレターが主流だったが、排ガス規制の強化などに対応するため電子制御化が進み、今まではEFI(電子燃料噴射装置)に置き換わっている。「ケーヒンさんはこの変化に十分対応してきた」(ホンダ関係者)という。
NTNもEV用関連部品の開発に力を入れている。その一つがインホイールモーター。独自のサイクロイド減速機を使って小型・軽量化したのが特徴で、開発担当の福村善一常務も「EV用部品の早期実用化がわが社の成長を左右する」と開発陣に檄を飛ばしている。さらに、EVに関する研究開発等に力を入れるため、今夏には「新商品・知的財産戦略本部」を設立した。
またアルミダイキャスト技術を使ってエンジンの吸排気バルブを開閉する、タイミングドライブシステムの部品で国内シェアトップのテラダイ(埼玉県入間市)も「エンジン部品に特化している現状からの脱皮」(寺園智樹社長)が課題だ。一昨年には、自動車以外の部品生産を視野に入れた新工場を立ち上げた。また今年から、異なる技術を持つ周辺5社と組んで共同受注に乗り出し営業面を強化する。
さらに同社が期待を寄せるのがダイキャストをベースにしたナノキャスト技術の実用化だ。今春から家庭用燃料電池(FC)向けのセパレータ開発に産官学で取り組んでいる。「ナノキャストによりアルミ鋳造できれば主流素材のカーボンに比べ大幅なコストダウンが実現し、家庭用FCの普及にも弾みが付く」(同)と期待を込める。このように電動化の流れの危機を、事業拡大のチャンスとみるのは多くの部品メーカーにも共通している。