2024年11月24日(日)

Wedge REPORT

2009年10月23日

競争力の源泉握る
電機メーカーの狙い

 ところで電動化の流れは部品点数の削減だけでなく、自動車のモジュール化につながるという見方がある。モジュール化により、家電製品のように簡単に組み立て可能になるのではないか、ということだ。現に中国の大手電池メーカー、BYD(広東省)は調達した部品群を組み立てたEVを米国のデトロイトモーターショーに出展、周囲を驚かせた。実際、中国にはEVに乗り出したメーカーが200社あるとも言われている。

 もっとも、中国勢の「台頭」については「モーターはまだしも、インバータは簡単に作れないし、(軽量化が必要なエコカーで)小型化できるのも日本勢だけ」(日立オートモティブシステムズCTO児玉英世氏)と、日本勢に一日の長があるようだ。

 では日本の電機メーカーは、車作りにどう食い込もうとしているのか。例えば、東芝は04年からフォードにHV用モーター・インバータを納めたほか、今年2月にはフォルクスワーゲンとEVの共同開発に乗り出した。

 前出の児玉氏も「我々の強みは、モーターとインバータをシステムで提供できること。EV、HVを量産できる完成車メーカーは、当然自前で設計するが、今後この分野に出てくるメーカーさんとは手を組める。まずはそうしたメーカーから受注をとりたい」と意気込む。

 エコカーの開発競争は、電機メーカーにも変革をもたらすことは確かだが、自動車には安全性、快適性などが基本条件として求められる。それには、モーターをどこに積むか、重心をどうとるかなど、「すり合わせ技術」が必要となり「これは完成車メーカーにしかないノウハウだ」と、児玉氏も話す。だからこそ、「システムで提供する」ことで存在感を高めようとしているのだ。

 これに対して、特に資金力のある完成車メーカーは「電池、モーター、インバータなどエコカーの心臓部を手がけるサプライヤーを囲い込むことになるだろう。心臓部の差異化こそ自動車の競争力の源泉につながるからだ」(早稲田大学大学院総合機械工学専攻・大聖泰弘教授)というように、当然、主導権は手放さない構えだ。

 完成車メーカーによる内製化と囲い込みの強化、背水の陣で新領域を開拓する部品メーカー、そして技術を備えた電機メーカーの市場参入といったように、エコカー時代の到来に合わせて、自動車業界の流動化が本格化してきた。

 

◆「WEDGE」2009年11月号

 

 
 

 

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