当面のエコカー戦略の重点をHVに置く理由は両社ともほぼ共通している。トヨタ関係者は「ハイブリッド技術はプラグインHVやEV、FCVとあらゆる電動カーに応用できる基本技術だ。例えば、HVからエンジンを外せばEVになる」と強調する。
HVではトヨタ、ホンダに大きく出遅れた日産や三菱自動車などは当面、EVに経営資源を集中させる方針だ。去る8月2日、横浜新本社への移転に合わせて来年後半に本格発売するEV『リーフ』を初公開したカルロス・ゴーン社長は、主要部品のリチウムイオン電池は座間に量産工場を建設中であるほか、モーターは横浜工場で、またインバータは座間工場でいずれも内製する方針をぶち上げた。
電動化のカギ握る 内製化と囲い込み
こうした電動化の流れに伴い、完成車メーカーと部品メーカーの関係も微妙に変化してきている。それは完成車メーカーによるモーターなど主要部品の内製化と部品メーカーに対する系列化という囲い込みだ。
一般的に自動車は3万点以上にのぼる部品から成り、大半の部品は専門メーカーから供給されている。ただ、これまで自動車の心臓部であるエンジンは完成車メーカーの内製。完成車メーカーはエンジンメーカーといってもよく、各社は「エンジン開発に経営資源を集中、燃費性能や静粛性などを競ってきた」(ホンダ開発者)という経緯がある。
だが電動化は、自動車の心臓部もエンジンやトランスミッションから2次電池やモーター、インバータに置き換わることを意味しており、メーカーとしては独自色を維持するためにも絶対に手放すことのできない主要部品なのだ。現にトヨタ、ホンダ、日産ともモーターは内製し続ける方針だし、2次電池についてもトヨタがパナソニックと、ホンダ、三菱がGSユアサとそれぞれ、また日産もNECグループと合弁会社を設立した。このうちトヨタと日産は株式の過半を取得、囲い込みの姿勢を鮮明にしている。
また部品メーカーに対する系列化はホンダの動きをみるとより顕著だ。四輪車への参入が最後発だったホンダは「元々、(トヨタや日産などに比べ)有力な系列部品メーカーが育っていなかった」(ホンダ関係者)。
このためトヨタがデンソーやアイシン精機といったグループ内の有力部品メーカーと電装品など主要部品を「デザインイン」と呼ばれる手法を駆使して共同開発してきたのに対して、ホンダは総勢1万4000人に上る技術陣を抱える100%子会社の開発拠点、本田技術研究所に開発を委託、「開発した部品の図面を周辺の部品メーカーに渡し、発注する形態を採ってきた」(部品業界関係者)といわれる。
だが、電動化の流れは開発アイテムを急増させ、本田技術研究所のみでは対応し切れなくなってきたことも確かなのだ。こうした中、ホンダが打ち出したのが系列部品メーカーの育成と囲い込み。当然、資本参加や人材の派遣なども伴う。
既にホンダ系最大手のケーヒンは「『インサイト』の開発段階から(モーターとバッテリーをコントロールする)HV用ECU(エンジン・コントロール・ユニット)の開発を受託した」(小田垣邦道・ケーヒン社長)実績があるが、今後もこうした「デザインイン方式による開発・製造が増えていく」(ホンダ関係者)。