世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年1月11日

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原油価格低迷常態化でどうなる?

 論説は、油価の低迷は構造的なものであり、それは長期的に続くであろうと指摘しています。その大きな要因はシェールオイル革命です。

 シェールオイルの生産は、論説も指摘するように価格弾力性が高く、価格が下がれば生産が落ちるはずです。サウジなど湾岸の産油国が油価の大幅下落にもかかわらず生産を減らさない一つの有力な理由は、油価の下落が米国のシェールオイルに打撃を与え、シェールオイルの生産が減ることを期待したからでした。ところがシェールオイルの供給の価格弾力性は高いはずなのに、油価が50ドルを切っても、米国のシェールオイルの生産量は落ちていません。これは、リグの数は減っても、大規模生産への集約が行われたり、生産性の向上が続いたりしているためと考えられます。シェールオイルの高生産レベルが構造的なものであるならば、低水準の油価が新常態(ニューノーマル)になるということになります。

 今後当分油価の低迷が続くと、いろいろな影響が出てきます。一つは産油国の財政困難です。サウジは既に油価の下落が続くと見て、財政の大幅な見直しを始めています。国民に対するばら撒き的歳出を止める一方で、従来なかった国民への種々の課税を考えています。これはサウジにとり画期的なことで、サウジが対処しきれるかどうかの問題があります。ベネズエラでは12月6日の総選挙で野党が勝ちましたが、最大の理由は油価急落による経済危機であるとみられます。ベネズエラの政変をきっかけに、中南米の左翼政権の連帯が崩れる可能性があります。ロシアも財政が逼迫し、プーチンが今のような軍事支出の大きい対外政策を続けられるかが問われるでしょう。

 論説はシェールオイル革命で米国の中東石油への依存度が減り、他方中国とインドの中東石油への依存度は高まる一方なので、中東の安定に対する米国の関心は減り、中国とインドの関心は高まるだろう、と言いますが、米国は世界の指導的国家として、中東の安定に関心は持ち続けるでしょう。中国とインドの中東への関心が高まると言っても、これまでの米国のように中東に軍事介入することは考えられません。地政学的影響は大きいでしょうが、論説が示唆するほどのものではないのではなでしょうか。

 さらに、地球温暖化対策への影響も考えられます。油価が中期的にあまり上がらないとすると、新エネルギー開発のインセンティブがそれだけ弱まり、地球温暖化対策に影響が出てくるかもしれません。

  
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