WEDGE REPORT

2016年1月14日

»著者プロフィール
閉じる

中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

VWの死角

 中国自動車市場の王者といえば、VWである。VWは日米の自動車メーカーが中国市場に関心を示さなかった85年に外資では真っ先に合弁をスタートした。中国政府から「内陸に工場を作ってくれないか」と言われると、辺境の新疆ウイグルに工場を素早く建設するなど、当局とも親密な関係を築いてきた。その甲斐あってドイツブランドは15年18.9%(マークラインズ調べ)と外国勢で首位を維持し、VW人気も高い。

 14年7月には、17〜18年までに20億ユーロ(約2600億円)を投じて50万台規模の新工場を2つ稼働させるという大きな増産計画を発表した。世界的なスキャンダルとなったディーゼル車の排出ガス不正事件後もこの増産計画の修正発表はない。

 そもそも中国でディーゼル車は、ほぼ走っておらず、報道も規制されていることから、「不正事件によるVWへのマイナスの影響は全く出ていない」という。それどころか、10月の減税後にVWが急速に販売を増やしたことから、日系メーカーからは「減税は中国以外の地域での販売の落ち込みが懸念されるVWのために行ったのではないか」という声も聞かれた。

青空にスモッグがかかる広州市内

 しかし、そんなVWにも死角がないわけではない。昨年初めには、エンジンのオイル漏れなどがあり、一時的に台数を落とした。また、中国の役所幹部はこれまではVWの高級車に乗るのがステータスだったが、最近はVWよりも国産車に乗るようになっているなど、今までのようにVWを優遇してきたことに少し距離を置こうという動きもあるという。

 広州滞在中はスモッグに覆われて、PM2・5の数値が警戒レベルの200前後だった。日系メーカーの幹部はPM2・5の数値がリアルタイムで表示されるアプリをスマホにインストールしていて、リアルタイムで数値が分かった。中国の空気汚染は北京や上海だけではなく、広州など主要大都市でも深刻化している。それだけに中国政府が大気汚染対策に真剣になるのもうなずける。燃費規制は待ったなしの状況だ。VWはターボ対策では先行しているが、これからは燃費規制の強化で、ガソリンエンジンの省エネと能力向上の両立をすることができるかどうかが問われる。この競争を勝ち抜いたメーカーが今後の中国市場で優位に立てる。

関連記事

新着記事

»もっと見る