サウジとイランの緊張が高まっています。外交関係断絶から経済関係断絶になっています。スーダン、バーレーンもイランと断交、UAEもイランから大使を引き上げました。このサウジ・イランの対立は、一方、シーア派・ペルシャ、他方、スンニ派・アラブの対立であり、容易に解消されるものではありませんが、その緊張のレベルを一定範囲に収めておかないと、宗派対立が中東の各地に波及し危険な状況になることは、この社説の指摘する通りです。
米国が指導力を発揮し双方に対話を促せと言う社説の主張は良い提言です。米国は仲介を試みるべきでしょうが、それが実を結ぶかはよく分かりません。
サウジは国内に多くのシーア派を抱えています。そのうえに石油収入の激減で、大きなバラマキで国内の不満を収める余裕はなくなっています。イランは、サウジが国内の困難から目をそらすために積極的な対外政策やシーア派への弾圧を強めていると非難していますが、そういう面もあるでしょう。その中で外部仲介を受け入れられるか、疑問です。
他方、イランは革命防衛隊などの強硬派が内外政策の強硬化を狙っています。サウジの大使館を襲撃したことをロウハニ大統領が非難した直後、ハメネイはサウジに神罰が下るなどと大使館襲撃者を鼓舞するような発言をしています。
イランの内政は複雑怪奇でよく分からないところがありますが、米国の仲介を素直に受ける状況にあるとは思われません。ロシアがサウジの外相とイランの外相をモスクワに招待、仲介に意欲を示しています。サウジが応じるか否か、疑問です。ロシアの仲介の成果も見通しは暗いと言わざるを得ません。
サウジ・イランの対立がこのままのレベルで続いた場合、地域全体での宗派対立が激化することになるでしょう。
しかし、イランとサウジが戦争を始める可能性はあまりありません。サウジの軍事力は、空軍以外は弱体であり、他方イランは防空ミサイルを持っています。両国の油田地帯が戦火に見舞われるというようなリスクはない、と思っていて間違いないでしょう。
石油価格については、サウジもイランもOPEC加盟国ですが、この対立で減産合意はありえないので、また下振れする可能性があります。地政学的リスクをはやして石油価格が一時上がるとしても、一時的なものにとどまるように思われます。
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