チャアプタイ(ワシントン研究所のトルコ研究者)が、12月30日付の米ウォール・ストリート・ジャーナル紙に、「トルコの新しい古き友人。地域強国になる計画を持ちつつも、エルドアンは西側同盟国を再発見している」との論説を寄せ、トルコ外交が西側との関係重視に変わってきていると論じています。
2002年、エルドアンとAKP(公正発展党)は政権掌握後、トルコが西側に距離をおく方向を追求してきた。ダウトオール首相(前外相)は、イラン、ロシアのような国と良い関係を築き、欧州、イスラエル、米国と時折衝突することが、トルコを地域大国にすると考えた。しかしそうはならなかった。今トルコの4つの隣国、ロシア、イラン、イラク、シリアは、反トルコ同盟を作っている。トルコの唯一の同盟国は米国である。
最初、トルコ外交は成功しているかのように見えた。エルドアンはシリア、イラン、ロシアで歓迎された。アサドとの関係もよく、イランの核計画を擁護し、プーチンとガスパイプライン取引に署名した。
しかし、「アラブの春」が、トルコが地域大国になれるかの真のテストになった。2013年、トルコがムスリム同胞団を支持した時、伝統的なアラブ諸国と関係が悪化した。エジプトの新軍事政権と湾岸諸国はトルコと対立した。シリアでは、エルドアンはアサド反対派を支持し、ロシア、イラン、シリアと対立した。
古い政策に戻りつつあるトルコ
トルコはイラクのクルドとスンニ派アラブを支持し、イラクのシーア派政府と関係を悪化させた。今やロシア・イラク・イラン枢軸は対トルコ圧力を強めている。ロシアはロシアの戦闘機撃墜以来、トルコに経済制裁を課し、パイプライン取引を破棄し、トルコ領空もカバーするS-400ミサイルをシリアに配備した。ロシアは、クルド労働党(PKK)と同盟関係にあるクルド民主統一党(PYD)に武器供与をはじめた。
2015年9月には、ロシア、イラン、シリア、イラクが情報共有協定を結んだ。エルドアンはこの包囲網に直面し、外交政策を再検討し始めた。
トルコは古い政策に戻りつつある。トルコ・EU関係は復活しつつある。EUは難民の流れをコントロールするためにトルコの助けを必要としている。12月15日、トルコとEUは、経済・金融措置の調和を図るという加盟プロセスに合意した。トルコ・イスラエル関係も改善の兆しがある。トルコは対ロ関係の困難に鑑み、ガスの供給先の多角化を必要とし、ここにイスラエルのガスが入ってくる。トルコとイスラエルは、シリアからイスラム国(IS)に加え、それぞれPYD及びヒズボラから脅威を受けている。
しかも、トルコの米国との関係強化は、最良の発展である。エルドアンもダウトオールも、プーチンが11月24日の事件後侵略できなかったのは、トルコがNATO加盟国であったからだと認識している。ロシアの再興に直面し、トルコは今まで以上にNATOと米国を必要としている。
エルドアン・ダウトオール政権は、トルコをロシアと中東に接近させる政策を10年続けたあと、20年前に戻った。イスラエルとの関係が正常化すれば、トルコの外交は1995年のデミレル大統領時代とほぼ同じになる。米国との良い関係、イラン、イラク、ロシア、シリアとの非友好的な関係、EUとのビジネスライクな関係、イラクのクルドとの良い関係である。トルコは古い友人との関係改善による安全保障確保のチャンスを掴むべきだ、と論じています。
出 典:Soner Cagaptay ‘Turkey’s New Old Friends‘(Wall Street Journal, December 30, 2015)
http://www.wsj.com/articles/turkeys-new-old-friends-1451502979