単純なコピーではもはや通用しない
東南アジアではよく、タイムマシン経営と叫ばれる、クローンモデルが流行る。欧米や日本で既に成功しているがASEANでは無いサービスならば、投資家側も起業家側も安心だ。実際、特に欧米の起業家は、こぞって移住し、最先端のニュースを見ては、こちらでクローンビジネスを創出している。最たるものは、ドイツのwww.rocket-internet.com/ロケット・インターネット社だ。東南アジアだけではなく、世界中でクローンモデルを展開している。
ところが、「単純コピー」だけではうまくいかないことが証明されたのが2015年だったのかもしれない……。たとえば、ロケット・インターネット社が手掛けるフード・デリバリーサービスのFoodPandaは、ベトナム支社の撤退、そして、現地企業への売却を発表した。「コピーすればうまくいく」という簡単な気持ちでは上手くいくわけではないことを、起業家も投資家ももっと認識すべきだろう。
では、どのような点を考慮すべきなのだろう。言い換えれば、ビジネスモデル以外に、何が決定的に違うのだろうか。現場の視点からいうと、カネとヒトの管理が特に重要ではないか、と感じている。カネ、という側面では、決済手段が、未だに現金が主流だと言うことだ。たとえば配達業務をスタートアップが担う場合、現金管理をより徹底する必要がある。
朝、キャッシャーからドライバーにお金を渡し、一日の終わりに彼らから「渡した分」+「売上分」のお金を回収して、勘定を確かめないといけない。スマートフォンやEコマースが普及しているとは言え、銀行口座を持たない人もまだまだ多く、決済手段の主流は現金である。もっと言えば、人々はいまだに現金口座を持つことやEコマースを信用していない、といえるのかもしれない。現金で決済するのが当たり前の人に、ITという新しいサービスをいかに利用させ、どのような決済方法を提供すればよいのか、真剣に検討する必要がある。
ヒト、という観点では、東南アジアの人は、他国に比べて極めてソーシャルである、という点である。たとえば、私がジャカルタにいた時、男女問わず、暇さえあればみんな携帯でコミュニケーションをとっている。それもそうである。外は暑いし、車に乗ると渋滞、行くところはショッピングセンターくらいしかない。だからと言ってゲームを買える程経済的なゆとりもない。
DailySocialのデータによれば、Facebookの利用者は世界で4番目に大きいそうだ。WhatsAPPやPath、Instagramも使いこなす。面白いことに、こうしたSNSが、日本とは異なりセールスチャネルとして完全に成立していることである。Facebookで商品を勧めることはなんとなく日本人だとはばかれるが、インドネシアでは歓迎されるのだ。これは、フィリピンでも同じ傾向が見られる。マーケティングでは明確に差が生じるため、やり方に気を付けなければいけない。