2024年11月22日(金)

ベストセラーで読むアメリカ

2009年11月4日

 パーカーがフェースブックを巨万の富を生むベンチャー企業に脱皮させようと企てることで、学生が勉強の片手間に手掛ける趣味としての側面が消えていき、ある意味で普通の学生であるサヴェリンはフェースブックからやがて追い出されることになる。

 起業家スピリットにあふれるシリコンバレー文化を体現するショーンの胸のうちを次のように描く。

 Silicon Valley wasn’t about business―it was an ongoing war. You had to do things out here to survive that weren’t taught in any business class. Hell, Sean had never even gone to college, he’d started Napster while still in high school. Bill Gates had never graduated Harvard. None of the true success stories out here had gotten where they were by taking classes. They became successes by coming out here-sometimes with just a duffle bag on their back and laptop in their hands. (p170-171)

 「シリコンバレーではビジネスではなく、戦争が起きている。そこで生き残るには、大学の教室でビジネスについて教えてくれるようなことをやっていてはダメだ。高校時代にナップスターを創業したから、そもそも、ショーンは大学にさえ行っていない。ビル・ゲイツだってハーバード大学を中退した。学校に行ったからといって、ここシリコンバレーで成功するというわけではない。時に、ダッフルバッグをひとつだけ背負い、ノートパソコンを手にして、ここシリコンバレーに来た者が成功してきたのだ」

 シリコンバレーに広い人脈を持つパーカーの手はずで、さまざまなパーティに出席したり、ベンチャー・キャピタリストたちに会ったりすることで、サヴェリンはカルチャーショックを受け疎外感を味わう。

 He and Mark had been invited onto the yacht of one of the original founders of Sun Microsystems. It turned out, the man was an exotic eater-known for his tastes in bizarre, exotic foods. After they'd talked business for a few hours, one of the boat’s staff had brought out a gleaming silver tray. On the tray was a piece of fibrous-looking meat. Eduardo had been afraid to ask-but the man had volunteered the information right away. The meat was koala-which wasn’t just exotic, but, he believed, illegal. Still it would have been rude to turn the dish away. (p183)

 「サヴェリンとマーク・ザッカーバーグはサンマイクロシステムズの創業者の1人のヨットに招待された。その創業者は風変わりな食べ物を好むことで知られていた。ビジネスの話を数時間した後、ヨットの乗員の1人が光り輝く銀製トレーを持ってきた。トレーの上には繊維質の肉が置いてあった。エドアルド・サヴェリンは気後れして聞けなかったが、その創業者は自分からすぐに何の肉かを教えてくれた。コアラの肉だった。珍しいどころか、違法だとサヴェリンは思った。しかし、食べるのを断るのは失礼にあたるだろう」

興味深いアメリカのキャンパスライフ

 ザッカーバーグがフェースブックを立ち上げた時、ハーバード大学のキャンパスでは同じような交流サイトの開設を準備していた一卵性双生児の2人の男子学生がいた。フェースブックをスタートする前に、ザッカーバーグがこの双子の兄弟と接触していたため、双子の兄弟はザッカーバーグがアイデアを盗んだと抗議し始める。あろうことか双子は、ハーバード大学の学長のところに押し掛けて直訴する。当時のハーバード大学の学長は、クリントン政権末期に財務長官を務めたラリー・サマーズで、双子が訪れた学長室の描写が興味深い。


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