このまま既成勢力がまとまらないと、トランプが候補者になることもありえる。かつてロナルド・レーガンが出馬した時にも、多くの人が二流の俳優が大統領選に出馬すると冷笑したが、結果そつなく職務を果たしたこともあったと指摘する研究者もおり、トランプが大統領候補になることはそれほど問題と考えていない研究者もいる。
サンダースは若者の支持が高いが、若者は選挙に行かない人が多いこともあり、サンダースを支持する研究者も、当選はありえないとしている。また、仮に当選しても、彼の公約の99%は議会の反対があり実行はできないと複数の研究者が指摘していた。
トランプもサンダースもワシントンの住民にとっては、恐れる存在ではないということだ。ワシントンの住民が恐れているのはクルーズだ。
エスタブリッシュメントが恐れるクルーズ
ティーパーティと宗教保守に支えられたクルーズは当初泡沫候補と見られていたが、今や有力候補の一人だ。彼を支えているのは豊富な資金力だ。USAツディー紙の分析によると、大統領選への資金提供額の約半分は100万ドル(1億1000万円)以上を拠出している107の個人あるいはグループから行われている。
その中のトップは、1410万ドル(15億5000万円)を提供しているロバート・マーサーだ。マーサーはニューヨークのヘッジファンド・ルネッサンス・テクノロジーズを経営しておりクルーズを支援している。4位の1000万ドル(11億円)を拠出しているエネルギー部門への投資で知られるテキサス州在のトビー・ニューゲンバウアーもクルーズを「我が国で最も完成された保守政治家」と評価し、「他の支援者からも、もっと小切手が来る予定」とも述べている。 ワシントンの住民が恐れているのは、小さな政府との揺るぎない信念を持つクルーズが当選し、政府予算に大鉈を振るうことだ。そうなれば、結果として職を失う住民が出てくることになる。
次はサウスカロライナ州とネバダ州
次の予備選挙と党員集会は、共和党と民主党でスケジュールが異なり、サウスカロライナ州において、共和党が2月20日に、民主党が2月27日予備選を行う。ネバダ州では民主党が2月20日、共和党が2月27日に党員集会を行う予定だが、人口280万人のネバダ州に対し500万近い人口を抱えるサウスカロライナ州が注目されている。
サンダースの支持者には、非白人が少ない特徴があり、人口の3分の1近くを非白人が占めるサウスカロライナ州でどの程度の支持を集められるかが、今後の南部での得票を占う試金石になりそうだ。NBCニュースなどがサウスカロライナ州において1月17日から23日に実施した世論調査では、クリントン64対サンダース27だが、アフリカ系米国人では、その差は74対17になっている。
共和党では、トランプが36%の支持をサウスカロライナ州では集めており、2位のクルーズに16%以上の差をつけている。そのあとに、ブッシュ、ルビオと続くが、エスタブリッシュメントがまとまる気配は依然としてなく混戦が続くと予想されている。