WEDGE REPORT

2016年3月9日

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 一方でオープンソースにすることで、マスク氏らに利益ももたらされる。誰もが参加できる技術フォーラムにより、これまで自社だけの発想ではたどり着けなかった考え方に触れる可能性がある。世界中のすぐれた頭脳をサイト上で集めることができる。

 「ディープ・シンキング」を推進する上で大切なのはビッグ・データの存在だ。コンピュータが人の思考を学ぶためには膨大なデータの注入が必要となるが、オープンソースにすることでデータ獲得も容易になる。

独裁国家が悪用する可能性

 だが、この考え方はあくまで「性善説」に基づいたものだ。オープンソースのAI技術を、例えばどこかの独裁国家が悪用する可能性もある。これについてマスク氏らは「数の勝負になる。世界のほとんどの人は技術の悪用を考えていない。一握りの悪があっても、数の上で善が圧倒するため、技術の悪用は大きなリスクにはならない」と楽天的だ。つまりどこかで悪用があっても、オープンソース上の技術者たちがこの悪用を阻止するプログラムを生み出す。もともとソースが同じ技術だけに、悪玉潰しはそう困難ではない、という。

 AIはビッグ・データを必要とするため、現在開発途上の各社もある程度のオープンソースは行っている。グーグルは昨年11月、AIサービスを行うソフトウェアエンジン、「テンサーフロー」の一部を公開した。フェイスブックも12月にコンピュータサーバー「ビッグサー」のデザインの一部を公開している。公開することにより他者に利益をもたらす反面、他者がそれを改善して自社の利益に反映する期待が込められている。こうした情報公開により、AI全体がさらに精度の高いものへと推進される。

 オープンソースのもうひとつの利点は、優れたアイデアを持つ研究者を世界中からリクルートできる、というものだ。研究者にとっては自分のアイデアを広く公開するチャンスであり、そこからシリコンバレーの一流企業にスカウトされる可能性もあるのだから、オープンソースへの参加は彼らにとっても利点となり得る。

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