米国のオバマ大統領と中国の胡錦濤国家主席の会談を受け、11月17日に米中両国政府は共同声明を発表した。国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)の直前ではあるが、温暖化・環境問題で具体策が共同声明に織り込まれることはないとの会談前の予想通り、COPの成功に向け共に努力するとの抽象的な表現が共同声明に織り込まれただけであった。
この声明に見られるように、米国も中国も国連の場で温暖化問題に取り組むことには積極的な姿勢を見せているとは言えない。しかし、この両国は温暖化問題を梃子にビジネスの拡大に共同で取り組むことでは、熱心な姿勢を見せている。両国にとりメリットがある、まさにWIN-WINの関係が構築されつつあると言ってもよい状態にある。結果として米中の巨大な温暖化ビジネスの市場から日本が締め出されることになるかもしれない。
北朝鮮や経済問題ではない
米中戦略・経済対話の本当の狙い
米中両国は7月下旬に「米中戦略・経済対話」をワシントンで開催した。クリントン国務長官、載国務委員が参加するトップ級会談であった。日本では、会談で議論された北朝鮮問題、経済問題に関する報道はあったものの、両国が会談の結果締結した温暖化問題に関する覚書についての報道は殆どなかった。しかし、米国政府の発表では、米中戦略・経済対話の核は温暖化防止とクリーンエネルギーの促進にあるとされている。
この覚書を、オバマ政権のグリーンエコノミー政策、更には現在米国の上院で検討されている「温暖化防止法案」(ACES法案)と合わせて考えると、温暖化・環境ビジネスに関する米国の対中政策が、まさに浮かび上がって来るように思う。米国で創設が予定されている「排出権市場」を利用し中国に設備を売り、米国の環境技術を梃子に巨大なポテンシャルを持つ中国の環境ビジネスを押さえ、米国の産業構造の転換にまで利用しようという米国の深く練られた戦略である。
7月28日に米中両国政府間にて締結された「覚書」では、両国政府が温暖化問題の解決に協力することが次のように謳われている。″両国は野心的な国内努力と国際協力を通してエネルギー安全保障、気候変動と環境保護に精力的に取り組むことを約束する。″
この目的のために、両国は低炭素経済への移行を図り、研究、開発の分野で対話と協力を行うことが明示され、10分野を中心に協力が行われるとされている。また、両国を合わせた市場の大きさにより目標の達成が容易になるとも、書かれている。主な協力分野としては、次のような分野があげられている。
(1) 省エネルギー、効率改善
(2) 再生可能エネルギー
(3) 石炭のクリーンな利用、CCS(二酸化炭素の捕捉及び貯蔵)
(4) 電気自動車を含む持続的な輸送
(5) 送配電網の近代化