2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2016年3月12日

合否判定のやり直しは混乱を招かない

 都教委は、公表した「見解」の中で、「金星の位置を確実に選択できるようにするために、正答となる金星の位置を実際の位置から移動して、図3に示したイの位置においたものである。」と説明しているが、このことは、「本当の答はウだが、イと答えるように誘導したから問題はない」という意味だろう。

 しかし、採点をした高校現場からも専門家からも声が上がっているのは、「このはっきりしない設問を解けと言われれば、「ウ」と答えるし、「ウ」を否定する根拠も設問からは見当たらない」というものである。とても「イ」に誘導できていない。

 なお、高校現場や専門家たちの主張は、この設問の曖昧さから、「イ」も×にすることができず、「イ」と「ウ」の両方を○にすべきという主張である。しかし、実際は、「イ」が4点、「ウ」が×で0点として採点されてしまっているのである。

 「入試の公正性」という職業的良心と、「正しく天文学の基礎を教える」という学問的良心が大きく損なわれようとしている。

 合格発表は既に終わってしまっているが、一度、合格と通知した生徒に対しては、例えそれが間違いだったとしても、合格を取り消すことはできない。ただし、不合格と通知したが、本当は合格だったという生徒に対しては、その旨を伝えて、当然、入学の意志があれば対応しなければいけない。過去の入試判定のミスの対処も全てそのやり方だ。

 詳しい理由は省略するが、幸い、今回の設問で「ウ」も正答として判定をやり直しても、追加合格者は各高校で多くても数名程度となるだろう。どこかのクラスの定員が1人増えて41人になる程度であり、現場にほとんど混乱は生じない。

 合格発表から時間が経てば経つほど、「実は合格でした」と言われても、他の高校への進学を決断しているケースもあると考えられ、実際の追加入学者は、もっと少ないかも知れない。

 なお、3月9日に、国立天文台の縣秀彦氏が会長を務める「天文教育普及研究会」が都教委に提出した「平成28年度東京都立高等学校入学者選抜学力検査問題(理科)に対する意見書」では、「全員に加点するなどの適切な対応」が求められているが、それは、出題ミスの際の一般的な対応ではあるが、今回のように合格発表後の場合は、追加合格者が増えすぎて教育現場が混乱することのないよう、「ウ」と回答した生徒への加点が適切ではないか。


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