2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2016年3月12日

中学校の教科書はどうなっているのか

 東京都は教科書の採択を54の区に分けて行っている。その内、理科で来年度以降、過半数の30の区で採択される予定になっているのは東京書籍の教科書だ。

 この東京書籍の教科書を見ると、「水星、金星が太陽から最もはなれて見えるときの地球との位置関係」という今回の設問の図3のような図が掲載されているが、地球から水星や金星に向かって引かれた視線方向の補助線は、模式的に大きく書かれた地球の丸の中心点を始点として、正しく引かれている。

 やはり、「中学校ではこのように教えている」という都教委の弁明はおかしいのではないか。

 もちろん、全ての教科書や問題集を見たわけではないが、おそらく模式的に書かれた地球の表面から視線方向の補助線を引いて、見える天体の角度の違いを説明するような、今回の【都教委の補助線】のような図は存在しないだろう。もしあったとしたら、すぐに、地球の中心点を始点とするように訂正させなければいけないという話だ。

 このような都教委の「見解」が放置されてしまったらどうなるだろう。

 今後、都教委の指導下にある都立の中学校では、このような間違った補助線の引き方を教えていかなければいけないのだろうか。「中学校ではこのように教えてきた」というのが嘘であったとしても、「中学校ではこれからこのように教えていく」として、間違った教育を既成事実化していくつもりだとしたら、恐ろしい話だ。

 塾でも、これからは、「私立の高校を受験する人は、このような問題が出た場合は正しく中心点から補助線を引きなさい。ただし、都立高校を受験する人は、都教委はこのような見解を出したままなので、正しく補助線を引くと×にされるので、このように、模式的に書かれた地球の表面の赤道にあたる地点から補助線を引きなさい」と指導することになるのだろうか。
そのような教育は、とても想像できない。


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