2024年4月20日(土)

Wedge REPORT

2016年3月12日

補助線の始点のずれはどこまで許されるのか

 前稿からの繰り返しになるが、太陽系のスケールに比べ地球は非常に小さく、本来は図上では点として表示されるべきものだ。したがって、月や惑星への視線方向の補助線は模式的に描いた地球の中心点から引かないと正確な角度にはならない。

 地球の「中心」ではなく「表面」から補助線を引いて説明をしても許されるのは、その分、角度はずれてしまうが、それでも答が変わってしまわない範囲でのみだ。

 例えば、地球と金星だけの二体問題で、金星の動きと見え方を定性的に説明するだけならば、そのような補助線を引くこともあるだろう。定量的には不正確になるが、表面から補助線を引くことで、見える時間や方角などが説明しやすくなるメリットがある。

 ただ、それが許されるのは、定性的な説明が矛盾してしまわない範囲までであり、説明しやすくするために引いた少し不正確な線が、不正確すぎて、定性的に正しい説明さえできなくなってしまっては、本末転倒だ。

 特に、この設問のように、見える時間や方角が問題文で示されていて、それを求めるわけではない場合は、補助線の始点をずらして考えるメリットは何もない。また、もしも始点をずらして考える必要があったとしても、そのために答が「イ」になってしまった、というのでは、明かな「ずらし過ぎ」だ。

 だから、「中学校ではこのように教えているので問題ない」という説明は、またもや都教委の勘違いだ。

 誰も、答を間違うほどずらして説明はしないだろうし、もし、そんな説明をしている教員がいるとすれば、それは説明をしているのではなく、間違いを教えていることになる。

 仮に、中学校で間違えて教えている教員がいたとしても、だから入試の設問の間違いが許されるという理屈もおかしい。都教委は、本来、間違いを教えないように指導する立場であるはずだ。


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