2024年11月22日(金)

海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年3月13日

 さらに、クリントン陣営は多様性重視のメッセージを効果的に発信するための舞台設定をしました。スカーフをしたイスラム系及びクリントン支持の看板を持ったアフリカ系やヒスパニック系の支持者を、勝利演説を行うクリントン候補の後に立たせたのです。しかも、彼らはすべて若者です。そこには、クリントン陣営のメッセージがあります。若者の支持者が多いサンダース陣営に、「一緒に協力して頑張ろう」というメッセージを発信していたのです。

 それにもかかわらず、米CNNによれば1週間後に行われたミシガン州での予備選挙では、若者(18-29歳)の81%がサンダース候補に投票しています。クリントン陣営がサンダース陣営の若者に呼びかけたメッセージは、まったく効果がなかったのです。率直に言ってしまえば、クリントン候補は、若者には魅力的な候補に映っていないのです。

クリントン陣営のパンフレット

スーパーチューズデーで配布されたクリントン陣営のパンフレット(筆者撮影@テキサス州ダラス)

 テキサス州ダラスにあるクリントン選対のマネジャーから指示された戸別訪問を行う選挙区は、アフリカ系が多く住む地区でした。西部ネバダ州及び南部サウスカロライナ州と同様、クリントン陣営はテキサス州ダラスにおいても、アフリカ系の票に依存した戸別訪問を展開していたのです。

 東部ニューハンプシャー州コンコードで戸別訪問をした際、白人の有権者はクリントン候補に対してかなり不信感を抱いていました。ところが、テキサス州ダラスで訪問したアフリカ系の有権者の間では、「ヒラリーは最高の候補です」「ヒラリーは私たちのことを気遣ってくれます」といった肯定的な声が圧倒的でした。アフリカ系のクリントン候補に対する信頼度はかなり高いと言えます。

テキサス州ダラスのクリントン選対も他州の選対と同様、若者よりも中高年が多い(筆者撮影@テキサス州ダラス)

 戸別訪問の際、筆者は有権者に配布したパンフレットの写真に注目しました。英語とスペイン語の2カ国語でクリントン候補の政策を説明したパンフレットの表紙には、3枚の写真が掲載されています。一番上はアフリカ系の2人の女性、真ん中はヒスパニック系の若い男女、一番下は高齢者がそれぞれクリントン候補と一緒に写っています。まさに今回の選挙でクリントン陣営が、標的としている有権者です。このパンフレットは、スーパーチューズデーの後に行われた中西部ミシガン州での予備選挙でも使用されました。

 クリントン陣営の頼りは、今、アフリカ系、ヒスパニック系及び高齢者です。彼らの票を確実に獲得していくために、戸別訪問の際、支持者に投票日当日の行動計画を立てさせる選挙戦略をとっていたのです。同陣営のボランティアの運動員が、支持者に何時に投票に出向くのか尋ね、計画を作らせることにより投票率を高める戦略です。中西部アイオワ州及び東部ニューハンプシャー州でも、同様の戦略を実行しており、地上戦において今後も続けていくでしょう。


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