2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年4月1日

 豪グリフィス大学アジア研究所のレイトン研究員が、豪ロウィー研究所のブログInterpreterに、今までの対南シナ海戦略は成功しておらず、(1)他の問題とリンクさせる、(2)島の開放を受け入れる、という二つの新たなアプローチが考え得る、との記事を2月26日付で寄稿(同日付でNational Interest誌ウェブサイトにも転載)しています。論旨は次の通り。

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効果得られていない均衡戦略や法の支配論

 南シナ海について今までのところ中国の戦略がより成功している。なぜ均衡戦略と法の支配戦略は失敗しているのか。

 均衡戦略の例はベトナムである。ベトナムは沿岸警備隊などの近代化を図り、インド、ロシア、日本、米国との関係強化を図っている。米海軍による航行の自由作戦も均衡戦略の例である。しかし均衡戦略は中国の力に利用されるだけであり、中国により簡単に対抗されている。米国を除く地域の全ての国に対し中国は相対的に優位な力を持っている。南シナ海を通る多くの海運は中国へ向かう。中国はこの紛争につき一層大きな利害とクレディビリティーを持っている。小島を巡って中国と戦争をすることはコストに合わない。

 中国は軍事的衝突に至る口実を相手に与えないように、深慮に基づくアプローチをとっている。多くの関係国にとり中国は最大の輸出市場であり、中国はこれをバーゲンに使うことができる。

 法の支配論に対して、中国はルールは守るという。しかし中国の見解によれば、南シナ海は1943年のカイロ宣言、45年のポツダム宣言により戦後中国に返還されたものだという。さらに中国はサンフランシスコ条約の当事者ではないし海洋法署名の際に南シナ海につき留保を付したと反論する。

 中国は国際司法裁判所(ICJ)の仲裁を避けている。フィリピンはICJの仲裁を求めたが中国は結果を無視すると述べている。

 中国はゼロサムの結果に持ち込もうとしている。均衡戦略や法の支配論が効果的でないとすれば二つの新たなアプローチが考えられる。


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