2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年4月1日

 第一の戦略は、中国共産党が重要と考える具体的問題を突くことである。党の最大の狙いはレジームの維持にあり、党は不満者を弾圧したり、歴史を書き直したりしている。党は現状への不満が起き、これが関係国によって利用されることを恐れている。ダライラマとの会見や人権問題、報道の自由、インターネットの開放、中国の真の歴史などは手段となる。党の正当性の問題を南シナ海の問題にリンクすることができる。

 第二のアプローチは中国の将来の行動を規制しようとするものである。中国は人工島の港や滑走路を遭難救助などのために提供すると述べた。最近王毅外相はこれらの施設を他国に開放すると述べた。この申し出を受けたらどうか。国連やASEANの施設あるいは要員をこれらの島に置くことを求めることもできる。これにより島を中国の排他的財産ではなく、世界と利益を共有する新たな領域として再概念化することができる。軍事活動を規制することもできる。

 中国にコストをかけても見合う成果が得られないのであれば、中国の既成事実を認めることが賢明かもしれない。今の非効果的な対応の継続は不賢明である。中国の政策決定者は、間違った教訓を学び強硬な戦略が最も有効だと信じるようになる。それは南シナ海への支配を勝ち取った中国よりも悪いものだ。

出典:Peter Layton,‘South China Sea: Beijing Is Winning, but Here's How to Retake the Initiative’(The Interpreter, February 26, 2016)
http://www.lowyinterpreter.org/post/2016/02/26/South-China-Sea-Beijing-is-winning-but-heres-how-to-retake-the-initiative.aspx

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南シナ海問題解決には“世界”を巻き込め

 南シナ海に直接の利害を持たない立場からの、安直な議論のように思えます。この問題には、辛抱強く、想像力を駆使して、手綱を緩めないで対応することが重要です。筆者は中国の既成事実を飲み込むことが賢明かもしれないとすら言ってのけますが、筆者の言うようなことをすれば、結局中国の思う壺になってしまいます。さらに、将来同様の行動を認めることになります。問題は中国の行動にあることを忘れてはなりません。特に筆者が最後のパラグラフで述べることは理解できません。

 第一のアプローチとして提案する中国共産党の正当性の問題を突くべきとの議論は、南シナ海とのリンクを議論する以前の問題であり、人権や報道の自由などは中国側に指摘していくべきものです。

 第二のアプローチは、中国の既成事実を認めるものとなり、賢明とは思われません。中国の主張の核心は領有(主権)にあり、真の意味で国際所有・管理といったことに同意することはないでしょう。

 現時点で均衡戦略、航行の自由戦略が間違っているとは思いません。中国の振る舞いが世界のルールに反していることを突き付けていくことが必要です。ボトムラインは世界のルールの順守です。この問題について「中国対世界」という構図ができ、世界の圧力が高まることが重要です。その意味で中国に対してソフトな欧州と対話することが重要です。その欧州も、少しずつ改善されているようにも見えます。

  
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