現在は不動産バブルのサイクルや90年代以降の公共事業の盛り上がりの時期が終わり、新たなサイクルが始まる時点にあるように見える。企業の設備も、前回の景気拡大期に更新が進んだとはいえ、20年前と比べると格段に老朽化しており、多くが更新時期を迎えている。このことは、実に好都合である。新たなブームを迎えるにあたって、更新の必要性のある設備が多い上に、いままでのブーム終焉で新たな建設投資需要に取り組む対応力が存分にあることを意味しているからである。
いままでの国土開発は人口増や産業発展を前提としたものであった。しかし、現在要請されているのは、高齢化と人口減少、温暖化対策等新たな世界経済環境への対応、財政制約や輸出企業の工場立地の減少なども踏まえた経済自立と地産地消など、従来とは全く異なる前提での国づくりである。
人口減少、高齢化こそ地価上昇の起爆剤
もっとも、前提が大きく異なっても、地方の経済活力となり、日本経済の成長となって我々の豊かさを増進させる国づくりとなることには何ら変わりない。しかも、ともすれば経済成長の抑制要因となる高齢化、人口減少、厳しい温暖化対策、強まる財政再建の要請、全てが新たな建設投資循環につながり、強力な成長戦略になるのである。
そして、この成長戦略は、コンパクトシティや都市での太陽光発電などの地産地消戦略を通じて、沈滞する地方の活力を取り戻させる。主役も受益者も、地方の在住者であり、建設業や内需型を中心とする幅広い企業である。加えて、一部では過度にコンクリートで固められた感もある国土を再び自然豊かな国土に戻すという点では、日本の美しい自然も主役と受益者であるし、地球も恩恵を受けることは言うまでもない。
さらに、財政も受益者であることを付け加えなければならない。新たな国づくりには巨額の資金が必要となる。しかし、インフラ整備を政府や自治体が担うとしても、基本的に都市再開発となれば民間資金が中心となる。当然、財政支出を伴わない、容積率緩和などの規制見直しや税制優遇等による経済効果も大きい。地産地消が成り立つ収益性のある事業が主体なのだから、民間資金を利用して民間に施設整備と公共サービスの提供をゆだねる手法であるPFI(Private Finance Initiative)を活用できる余地も少なからずあろう。
そして、都市再開発などによって土地利用が高度化し、不動産がもたらす付加価値が増えれば、直接税収増となって財政を潤し、インフラ整備等にかかる財政支出を事後的に回収できることにもなる。ちなみに、固定資産税収は8.6兆円あり(2007年度)、1割増えれば1兆円近い税収増である。もちろん、温暖化対策税が創設された場合、環境対応の中核となる新たな国づくりは、その税収投入先として申し分ない。
公共事業、工場誘致など、いままで日本と地方の経済成長を支えた国土開発のやり方を大転換させることが大きなチャンスであり、成長戦略とはやや突飛に聞こえるかもしれない。しかし、多くの地方での不動産価格の持続的下落は、その地域での土地の利用価値が今までのやり方では維持できないことを示している。
地価下落は、地方が抱える人口減少、高齢化などを逆手に取った新たな国づくりをしなければならないとの強い警告と言い換えることもできる。地方の下落し続ける地価にこそ、大きなチャンスとなるフロンティアが映し出されており、日本の明るい将来も垣間見える。
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