世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年4月29日

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 この社説は、トランプやクルーズがテロ対策として拷問とされる水責めの復活、イスラム教徒地区の警察によるパトロールを提案していることを、スタンフォード大学でのヒラリー・クリントンの反テロ対策についての演説を引用する形で批判したものです。

大統領選巡り分裂する米国

 テロに対する強硬姿勢は、選挙民にアピールするので、トランプとクルーズはそれを利用しているように思われますが、拷問やイスラム教徒地区パトロールの提案は、前者は人権擁護の見地より、後者はイスラムを敵視するとの見地より、まったく好ましくありません。イスラム教徒の疎外感を減らし、穏健なイスラムを取り込んでいかないと、イスラム過激派との戦いはうまくいかないでしょう。その観点から、この社説は適切な主張をしています。

 ただ、オバマのテロ対策が良いものであったとの評価には同意しがたいものがあります。オバマは、IS(イスラム国)が勢力を強めることを許し、今なお米国の「存立を脅かす」脅威ではないとして、脅威の度合いを過小評価しています。ブッシュのようなやり方がいいとは言えないにしても、もっとテロを抑える対応があり得るはずです。要するに羹に懲りて膾を吹くようなことをしているうちに、テロの脅威は増大し、今や国家を名乗るまでになっています。これについて反省が必要と思われますが、先のアトランティック誌でのオバマ発言を見ると、米国の関与を減らしたことを誇りにしていて、反省がないようです。

 米大統領選挙については、共和党は分裂しています。トランプが候補になっても多くの共和党員は支持せず、仮に共和党大会で主流派が強引にトランプを引きずり降ろせば、トランプ支持者は離反するので、共和党が大統領職を奪還する可能性は低いと考えられます。したがって、クリントン大統領の可能性が高いですが、クリントンにはよく考えてほしいと思います。地上戦によろめき入っていくのは間違い、人々は自分の共同体を確保すべしと言いますが、シリアもリビアも破綻国家になってしまい、自分で自分の共同体を確保できないからこそ、問題が出てきているのです。この現実を良くかみしめるべきでしょう。米国の役割を忌避してみても、現実が課題を突き付けてくることになるのではないかと思われます。

 クリントンのスタンフォード演説は、一応バランスの取れた演説ですが、現段階で手を縛るような発言はしない方が良いでしょう。

  
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