2024年12月6日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年4月29日

 3月24日付のニューヨーク・タイムズ紙が、社説を掲げ、ブリュッセルでのテロを受けての米大統領選挙の候補者のテロ対抗措置に関する発言を紹介しています。ヒラリーについては、スタンフォード大学での演説を称賛し、トランプ、クルーズについては批判しています。社説の要旨は、次の通りです。

“米国の価値を放棄すべきでない”と説くヒラリー

 ブリュッセルでのテロを受け、トランプはテロ容疑者への水責めを主張し、クルーズはイスラム教徒居住地を警察がパトロールすることを提唱している。こういう恐怖を煽る言動は、特定宗教の信者を差別し、憲法に反するのみならず、同盟国やイスラム教徒との関係を緊張させ、国家安全保障を損なう。

 ヒラリー・クリントンは、スタンフォード大学で、これらの共和党候補に、賢明に次のように反論した。

 「我々はテロリストに脅されて、我々の価値を放棄すべきではなく、米国はいかなる状況でも拷問をするべきではない。米国は恐怖ですくむことはないし、壁の後ろに隠れもしない」

 クリントンはヨーロッパでは、入国の際に戦闘員と疑われる人を発見した国はそれを隣国に自動的に通報する仕組みがないが、改善すべきである、米政府はテクノロジー会社と緊密に協力し、テロリストの宣伝を阻止し、法執行機関が暴力的企ての情報を傍受できるようにすべしと述べた。彼女はプライバシーへの明確なコミットメントは言明せず、政府とアップル社のiPhoneのロック解除論争については中立の立場を保った。

 クリントンはまたIS(イスラム国)への軍事行動には新しい法的枠組がいると言ったが、詳細は述べなかった。

 共和党はオバマ政権が反テロ行動で弱いとしばしば批判してきた。しかしオバマは、ブッシュ大統領がはじめた破局的戦争の規模を縮小しつつも、眼に見えない、小さな足跡の作戦で過激派を断固として追い詰めてきた。

 クリントンは「もう一度費用の掛かる中東での地上戦によろめきながら踏み込んでいくことは深刻な間違いである。イラク、アフガンで何かを学んだとすれば、それは人々や民族は自分自身の共同体を確保すべきであるということである」と述べた。

出 典:New York Times ‘Hillary Clinton and Other Candidates on Counterterrorism’
(March 24, 2016)
http://www.nytimes.com/2016/03/24/opinion/hillary-clinton-and-other-candidates-on-counterterrorism.html?_r=0

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