海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年5月4日

»著者プロフィール
著者
閉じる

海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

「自由の鐘」の看板(筆者撮影@クリントン勝利集会-ペンシルベニア州フィラデルフィアコンベンションセンター)

 地上戦重視のクリントン陣営は、本選で豊富な資金力を活用して戸別訪問のプロを採用することは可能ですが、やはりサンダース陣営に情熱を燃やしているボランティアの若者が必要です。副大統領候補のカテゴリーには女性、ヒスパニック系、アフリカ系並びに激戦州がありますが、どの候補を選択するにせよ、クリントン候補はエキサイティング及び情熱を選対にもたらし、しかも若者、無党派層並びに「非常にリベラル」な有権者の支持を得ることができる候補を選択する必要に迫られています(図表1)。

アフリカ系の有権者の声

戸別訪問に参加する米国国際サービス従業員労働組合員(筆者撮影@ペンシルベニア州フィラデルフィア)

 クリントン陣営は、テキサス州やミシガン州と同様、ペンシルベニア州においてもアフリカ系の獲得に時間とエネルギーを費やしていました。クリントン陣営では、女性、ヒスパニック系、アフリカ系、若者、同性愛者から構成される「異文化連合軍」の中で、アフリカ系がかなり重要な地位を占めています。筆者が担当した地域は、主としてペンシルべニア州フィラデルフィア北部にあるアフリカ系の低所得者層が多く住む地域でした。そこで得た有権者の声の一部を紹介しましょう。

 ルース・リトルジョン(59)

 ・「ヒラリーは一番経験があり、大統領になる資格があります。トランプを破らなくてはいけません」

 クリント支持者は、共和党候補を含めた5人の中でクリントン候補が最も経験豊かで、大統領になる資格があると指摘する傾向があります。

 グロリア・コービン(90)

 ・「ヒラリーは私たちのために戦っています」

戸別訪問出発前(@ペンシルベニア州フィラデルフィア)

 クリントン候補は、男女の賃金格差是正や育児世帯における有給の病気休暇制度など有権者のために戦っているというメッセージを発信しています。クリントン候補はニューヨーク市で行った演説で、男女の賃金格差について他の争点と結びつけて述べました。米国社会は、女性が約50%の労働力を占め、一家の稼ぎ手となっています。同候補は、1つの争点は他の争点と相互関係にあると指摘し、男女の賃金格差は家族の争点であり、人種差別でもあると示唆しています(図表2)。その狙いは、個別に争点について議論をするサンダース上院議員との相違を明確に有権者に示すことにあるのです。

 因みに、男性が1ドルを稼ぐ労働に対して女性は79セント、アフリカ系女性になると67セント、さらにヒスパニック系女性では56セントまで下がります。演説でクリントン候補は、男女の賃金格差の数字を挙げた後で、買い物をする際、「男性は定価で買っても、女性にはディスカウントがあってもいい」と語り、支持者から共感を得ていました。男女の賃金格差是正などクリントン候補が発信するメッセージが、コービンさんには確実に浸透していました。

関連記事

新着記事

»もっと見る