前向きに読み解く経済の裏側

2016年6月6日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

経済評論家

1981年 東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の業務に従事。2005年 銀行を退職して久留米大学へ。現職は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は一個人として行うものであるため、肩書きは「経済評論家」とする。

 かつて、大蔵大臣が選挙区の高齢者の陳情を受けました。「こんなに金利が低いと金利生活者が苦しいので、金利を上げて欲しい」というのです。そこで大臣が記者会見で「もっと金利を上げなければ」と発言し、大問題となった事がありました。金利を上げるのは日銀総裁の仕事で、大蔵大臣が金利の発言をするのは越権行為なのですが、その話は置いておきましょう。大臣の選挙区で、中小企業の人々が「金利を上げないで欲しい」と大騒ぎになったのです。

 低金利に不満な高齢者は陳情に行きますが、低金利に満足している中小企業は「低金利を守って欲しい」といった陳情には行かないので、大臣が陳情団の言い分だけを聞いて発言してしまったから問題となったのです。

 大臣としては、「陳情に来た人の言い分はわかった。では、陳情に来なかった人の言い分は何だろう?」と考えてみるべきだったのでしょうね。言うは易く、行なうは難し、ですが。

意図的に黙っている人も多い

 円安ドル高になると、輸出企業は儲かります。しかし彼等は黙っています。口を開くと労働組合が賃上げを要求し、部品メーカーが値上げを要求してくるからです。下手をすると税務署が来るかもしれません(笑)。一方で、輸入企業(輸入原材料を大量に使う企業を本稿ではこう呼びます)は「大変だ」と大声を出します。「ボーナスは出せない。部品メーカーにも値引きを頼まなければ。政府にも補助金を出して欲しい」というわけです。声を出している人の言い分だけを聞いていると、日本経済は円安ドル高で大打撃を被っているように感じますが、日本は輸出と輸入が概ね同金額なので、実際には大したことは起きていないのです。

 反対に円高ドル安になると、今度は輸出企業が大声を出し、輸入企業が黙ります。やはり声を出している人のいい分だけを聞いていると、日本経済が円高ドル安で大打撃を被っているように感じますが、そんな事はありません。

 大声を出している人を見たら、「黙っている人は何を考えているのだろう?」と自問自答してみる必要があるのですが、言うは易し、行なうは難し、ですね。

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