2024年11月22日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2016年5月16日

 日本企業は、いつからこんな情けない状態になってしまったのだろうか。デフレの中での厳しい競争は仕方がない。サプライヤーも必死の努力が求められるのは当然だ。しかし、それはお互い対等なプレーヤー、パートナーとしての必死の努力のはず。サプライヤーが商談に出向くと憂鬱になるということは、おそらく、その企業の社内でも同じく憂鬱な人間関係が繰り広げられていることが予想される。

 自社の社員とサプライヤーを憂鬱にさせる企業が付加価値の高いブランド価値を創造、維持することができるとはとても思えない。それは、自然の摂理ではないか。企業の本当の価値は、どれだけの顧客と自社の関係者の幸せにどれだけ寄与しているかということではないか。もし、伸び悩んでいる企業があるとしたら、経営学、経営戦術を語る前に、自社存在の本源的価値を見直す必要があるのではと今回の話を聞いていて感じた。自分の姿勢を戒める意味も込めて。これから日本で生き残り、発展する企業はある意味これと反対のことをしている企業である、と期待したい。

 中国のサプライヤーを憂鬱にさせる日本の流通業者がある一方で、中国のサプライヤーから尊敬、そして感謝されている立派な日本の会社もある。私は数年前、ある日本の大手流通のナンバーツーが中国広東省のサプライヤーを訪問するのに同行させてもらった。訪問することになったきっかけは、そのメーカーが大幅な納期遅れを起こしたこと。購買、製造、物流のプロセスに問題があるはず、と睨んだこの幹部は自ら工場の現場に乗り込み、プロセスのどこに問題があるのかを自ら分析、購買の管理から生産ラインの動線、さらには在庫管理に至る一連のプロセス全般の改善提案を行った。

 私が同行したのはその成果確認のための訪問だった。対応したのはおそらく40代のオーナー夫婦。奥様のお父様は創業者で、社長である旦那様はお婿さん。お二人はほとんど直立不動で、やや緊張した面持ちでこのナンバーツーを迎えた。工場の生産ラインを案内しながら、こことここをこのように改善しましたと、まるで自分の上司に報告する尊敬の眼差しで。ナンバーツーは日本の自動車メーカー出身なので日本の製造業のエッセンスを惜しむことなくこのサプライヤーにつぎ込んでいるのである。トラブルを全てサプライヤーの責任にする日本の会社がある一方で、ここまでサプライヤーを大事にして感謝されている会社もある。世の中は捨てたもんじゃないと思えてくる。感謝されている会社は今日に至るまで増収増益を続けている。

  
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