2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年5月19日

 米国のシンクタンクCSISのリチャード・ロッソウ上級研究員が、カーター米国防長官のインド訪問は両国の戦略的関係を前進させたと評価し、またこのことは政権移行期という不安定な時期を乗り切る上で意義があったとする論説を、4月14日付で同研究所のウェブサイトに掲載しています。要旨は次の通り。

米印関係進展にはずみ付ける今回の訪印

 カーター国防長官の二度目の訪印にはかなり高い期待が寄せられていたが、達成された合意はこの期待を満たすものであり、オバマ政権の残された期間におけるさらなる進展にモメンタムを提供する。

 昨年6月に合意された両国間の戦略的枠組みに基づき、今回合意されたものに、ロジスティックスの相互支援に係る合意(注:燃料、部品、役務などの相互の基地における相互融通の仕組み)の原則的承認がある。防衛技術協力の下での新たなプロジェクトが合意された。潜水艦の安全確保および対潜水艦作戦に関する双方海軍の間の協議、海洋安全保障に関する双方の国防省、外務省の間の対話も始まることとなった。また、インドの「Make in India」計画に呼応して米国はF-16、F-18戦闘機のインドでの生産に係る提案を行った。

 インドが安全保障上の重要なパートナーとなるという約束が直ちに実現するわけではない。当面は人道支援、海賊対策およびインテリジェンスの分野での協力が続くことになる。戦略的利益や能力増強の必要性に後押しされて作戦上の深い協力が実現することは、将来の何処かの時点まであり得ないであろう。

 今日、米国とインドの利益はかつてない程整合的である。しかし、能力の点で、両国は非常に異なる水準にある。米国は前のめり気味の姿勢をとり、相互主義の要求をすることなくインドの技術的能力の強化を助けようとしている。このような忍耐と抑制は、米国の支配的な性向とは一般的には考えられていない。


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