一担当者に対しても尊大にならず、謙虚に、ただただ事実の報告を求める。ミスや他社に劣っている部分があっても冷静に話を聞いていた。それが彼ら経営トップ自身の課題だと認識していたからだ。その態度に接して、若手は自分の仕事に誇りを持つことができた。かくいう私もその1人だった。
こういった経営トップがいると、徐々に社員自らが会社にとって必要なことを進んで言う風土が醸成されてくる。内部通報制度が活きるにはここが重要で、「通報者の秘密が守られるから」機能するのではない。
人事は、経営トップと一緒に会社風土を健全にしなければならない。そのためにリスクを背負って挑戦している人材や勇気を持って異論を言う人材を大切にすることを各マネージャーに理解してもらう必要がある。
また、トップが精魂込めて作った風通しの良い風土をしっかりと守り育てることも仕事になる。社員から相談や情報が上がってきたら、社内政治力学も考えながら、丁寧に解決の糸口を見つける努力をしてほしい。
最悪、自らの立場が危なくなるのがわかっていても、情報を上げるメンバーこそ評価する人事でなければならない。そういう人ほど、会社になくてはならない人材である。
問題を先延ばしにし、次の時代の経営にしわ寄せをすることほど、会社の健全性や成長性を奪うものはない。開かれた人事、信頼の置ける人事になる努力をし続けて欲しい。
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。