この百万都市の真ん中、交通路の運河に小舟が浮かんでいます(⑥)。棹(さお)を川底に垂直に差して、船を停めての「四手網漁(よつであみうりょう)」。左は四隅を吊り上げ網から魚を回収中、右の小舟は網を沈めて、魚を誘っています、阿吽(あうん)の呼吸で操業中です。さらに手前、荷船の漕ぎ手は「棹をななめに川底に差して」、うんこらしょ!
ここ江戸の町は上水道が完備され、神田上水、玉川上水から引かれた「水道の水で産湯(うぶゆ)をつかう」ことは江戸っ子自慢のひとつでした。その上水の余水は、この浮世絵の辺りで運河に落としていたのです。上水道の美味しい水をここで船に汲みこんで、深川や本所方面に運んで売りさばく、水屋さんの船で賑わう大事な給水ポイントでもありました。
牧野健太郎=読み解き 近藤俊子=構成/文
【牧野健太郎】ボストン美術館と共同制作した浮世絵デジタル化プロジェクト(特別協賛/第一興商)の日本側責任者。公益社団法人日本ユネスコ協会連盟評議委員・NHKプ ロモーション プロデューサー。浅草「アミューズミュージアム」にてお江戸にタイムスリップするような「浮世絵ナイト」が好評。
【近藤俊子】編集者。元婦人画報社にて男性ファッション誌『メンズクラブ』、女性誌『婦人画報』の編集に携わる。現在は、雑誌、単行本、PRリリースなどにおいて、主にライフスタイル、カルチャーの分野に関わる。
●ボストン美術館蔵「スポルディング・浮世絵コレクション」とは
米国の大富豪スポルディング兄弟が1921年にボストン美術館に寄贈した約6,500点のコレクション。「脆弱で繊細な色彩」を守るため「一般公開しない」という条件の下、展示はもちろん、ほとんど人目に触れることなく保存され、「浮世絵の正倉院」ともいわれている。
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