2024年7月22日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年5月26日

 米・サウジ関係には最近いくつかの綻びが見られますが、当面最大の問題は、米議会が「9.11」へのサウジの関与疑惑を追及しようとしていることでしょう。

相互不信に陥った米・サウジ関係

 サウジはジュベイル外相を密使としてワシントンに送り、もし米議会が「9.11」に関してサウジ政府の責任を問うことを可能にする法案を成立させれば、サウジが保有する7500億ドルに上る米財務省証券を売り払うと脅したと報じられています。実際にサウジが米財務省証券を売り払うのは困難とみられていますが、この逸話はサウジがこの問題をいかに深刻に考えているかを示すものであり、米・サウジ関係が困難に直面していることは明らかです。

 米国はシェールオイルの生産増で、サウジの石油に対する依存が大幅に減り、米国にとってのサウジの重要性が低下したとみられます。

 現在の米・サウジ関係を特色づけるものは相互不信です。

 ザカリアはこの状況を憂慮し、いろいろと問題はあるものの米国はサウジとの同盟関係を維持すべきである、と述べています。その通りでしょう。

 憂慮すべき最大の理由はサウジ政権の安定性です。サウジは油価の大幅下落で、財政困難に直面しています。サウジの新体制は、石油への一方的依存を見直し、歳入の多角化を図ろうとしていますが、これがうまくいく保証はありません。下手をすると、政府が国民にあらゆる福祉を提供する代わりに、国民は政府に服従するというこれまでの王室と国民の社会契約の維持が困難になりかねません。そうなればサウジ建国以来の危機です。

 ザカリアはもしサウジ王室が倒れれば、とって代わるのはリベラルや民主主義者ではなく、イスラム主義者、反動主義者である可能性が高いといっています。この見通しは当たっていると思います。

 米国は、サウジが基本的問題を抱えていることを理解し、忍耐強く懸案の一つ一つに対処すべきであり、サウジはサウジで、自身の直面する体制の潜在的危機を認識すべきです。

 もっとも米・サウジの相互不信と言っても、サウジの対米不信は対オバマ不信であるかもしれません。その場合は、オバマ在任中は、サウジ側から関係改善のイニシアティブが取られる可能性は低いです。

  
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