19日にエジプト沖の地中海上空で起きたエジプト航空エアバス機墜落はテロか事故か断定できないまま謎が深まっている。同機がパリを離陸する前にチュニジアやカイロを経由してきており、警備の厳しいパリの空港ではなく、こうした経由地で機内に爆弾が持ち込まれたのではないかとの疑惑も生まれている。
4つのシナリオ
18日23時過ぎにパリを飛び立った同機(乗客乗員66人)は19日午前1時48分に地上と通常のコンタクトをした後、同2時27分、ギリシャ領空からエジプト領空に入ったところで連絡が不能になり、2時半直前に機影がレーダーから消えた。
同機はエジプト領空に入った途端、左に90度急旋回し、次いで右に360度旋回。1万1000メートルから一気に約3000メートルまで急降下した。2時26分に自動的に送られたデータ通信によると、コックピット右側の窓が開けられ、コックピット近くのトイレと電子機器区画から煙が発生していた。
コックピットの窓が開けられていたのは、操縦室内に充満した煙を排出するためだったと見られているが、火災が発生していたのかどうかは必ずしも明らかではない。問題はこの異常が突然現れている点だ。エジプトのファトヒ民間航空相が「技術的なトラブルよりテロの可能性の方が高い」と述べているのもこのためだ。
専門家によると、同機の墜落の原因は大きく言って4つ指摘できる。4つとは、機体の故障、持ち込まれた爆弾によるテロ、操縦ミス、パイロットらの自殺行為だ。まず自殺行為については、パイロット(36)、副パイロット(24)ともこれまでの調べでは精神疾患や私生活でトラブルを抱えていた兆候はない。パイロットは飛行6000時間のベテランでもある。
2015年3月にドイツの旅客機の副操縦士がアルプスに墜落させた事件のようなことは考えられない、という。また操縦ミスについてもパイロットの熟練度から可能性としては低い。残されるは機体に重大な故障が発生したか、機内で爆弾が爆発するなどのテロがあったかである。
故障は、同機が2003年製造でまだ老朽化していなかったことなどを考えると可能性はあまり大きくはない。1つの仮説としては、同機の加圧システムが異常をきたした場合だ。この異常が発生すると、機体に亀裂が入ることがあり、パイロットは制御しながら高度を下げて緊急着陸しなければ、空中で機体がばらばらになる懸念が生じる、という。