昨年11月のパリの同時テロと、3月のブリュッセルの自爆テロはベルギーに巣くっていた同じグループによる犯行だったことが明らかになりつつあるが、その背後で犯罪者の若者を過激派組織「イスラム国」(IS)に引き込んだ“ジハードのサンタクロース”という男の存在が浮き彫りになっている。
重なり合う主力メンバー
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この世界を震撼させた2つのテロのネットワークは欧州各国の治安・情報当局の想定をはるかに超える規模と底深さだ。ISは「イスラム国」を宣言する以前から欧州に工作員を潜入させていたことが分かってきた。
4月初めの段階で、両事件に関与した疑いのある人間は約40人。うちパリ事件で9人、ブリュッセル事件で4人の計13人は死亡している。残りのほとんどは拘束されているが、彼らは同一ネットワークに属していたと見られている。
パリ事件の首謀者は、シリアで実戦を経験したベルギー国籍のアブデルハミド・アバウド(死亡)で、ネットワークのとりまとめ役だった。実行犯は10人で、運転と補給を担当していたやはりベルギー出身のサラ・アブデスラム1人だけが生き残って逃亡。ブリュッセル・テロの直前に当局に拘束された。
ブリュッセルのテロ事件の実行犯は5人。うち空港で自爆した2人は、イブラヒム・バクラウイとナジム・ラシュラウイ。市中心部の地下鉄で自爆したのが、イブラヒムの弟のハリド・バクラウイだ。このほか2人が両方の現場から逃走したが、4月に捕まった。
空港自爆犯の1人ラシュラウイは両事件の爆弾製造を担当。逃亡していたアブデスラムに隠れ家を提供したのが、ベルギー事件の地下鉄自爆犯ハリド・バクラウイで、両事件の主力メンバーは1つのネットワークの下、互いに顔見知りだったことが濃厚だ。