G7サミットには関心が向けられない?
安倍総理にとっての課題 は、「現職アメリカ大統領の広島訪問」のインパクトがあまりに大きく、その直前に自身が主催者となって行われるG7首脳会談が完全に埋没してしまう危険性があることだ。特に、G7サミット前にオバマ大統領がベトナムを訪問することを考えると、ベトナム訪問と広島訪問の間に挟まれたG7サミットにほとんど関心が向けられないままこの会合が終わってしまう可能性が今のままだと非常に高い。
しかし、今回のG7会合は現在の国際情勢を考えると非常に重要な会合だ。ロシアがサミットのメンバーから外れ、G20の限界も認識されつつある今、G7は、人権、民主主義、市場経済、法の支配など、第2次世界大戦以降の国際秩序を支えてきた価値観を共有する先進国の集まりとして、その重要性を再確認する必要がある枠組みだ。
特に、日本にとっては、今回のサミットで日本政府がフォーカスしたいと考えている女性のエンパワーメントや、世界の保健衛生問題に加えて、南・東シナ海問題や北朝鮮問題など、ともすればこれらの問題を地域問題として捉えて、積極的な関与を好まない英、仏、独、加、伊各国に対して、これらの問題は、国際規範の観点からみても重要な問題で、国際社会が一致して対峙しなければならないものであることを首脳レベルで訴え、理解を求める絶好の機会だ。
そのG7サミットが、事後のオバマ大統領の広島訪問に飲み込まれてしまうことは、日米関係の上では「これほど熾烈に争ったかつての敵が、今や、信頼と同盟関係で結ばれたパートナーである」ことをアピールするまたとない機会になることを考えればプラスだが、日本外交全体から見れば必ずしもプラスではない。
オバマ大統領の広島訪問に大半の関心が向けられることは不可避だ。しかし、それを踏まえたうえで、G7首脳会合を日本が主催するという7年に1度の年に、日本が、サミット議長国としていかに存在感を示すことができるか――安倍総理の外交手腕が問われることになるだろう。
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