11月に投票を控えたアメリカの大統領選挙に向けて民主、共和両党から大統領候補者を選ぶ予備選が年明けから真っ盛りだ。中でも3月1日は「スーパー・チューズデー」と呼ばれる全米11州と米領サモアで予備選が行われる日で、全米でその結果に関心が集まった。
その結果は、民主党側は8州で勝ったヒラリー・クリントン前国務長官が優位を固める結果となった。とはいえ、昨年の段階では泡沫候補だと言われていたバーニ―・サンダース上院議員が当初の予想以上に健闘しているという事実は変わっていない。また、クリントン氏が国務長官時代に、国務省から支給される電子メールのアカウントではなく、個人の電子メールで公務に関するやり取りをしていた件に関するFBIによる捜査は依然として続いており、捜査結果がクリントン氏にどのような影響を与えるのかは、引き続き、大きなリスクとなっている。3月7日に、独立系候補として出馬するのではないかとささやかれていたマイケル・ブルームバーグ前NY市長が、「自分が出馬するとトランプ氏やクルーズ上院議員を利することになる」として今年の大統領選には出馬しない意向を表明したが、このことは民主党陣営が抱える脆弱さを示唆する動きとして注目されている。
予想に反し快進撃止まらぬトランプ氏
共和党の状況はもっと深刻だ。大統領選挙に向けた動きが本格化し、ドナルド・トランプ氏が立候補を表明してからというもの、長年の共和党支持者やベテランの共和党系政治評論家、ロビイストなどは、トランプ氏は耳目を引く発言で話題を集めてはいるが、予備選がはじまれば、有権者は冷静な判断をするはずで、結果、トランプ氏は失速するだろうとみていた。しかし、ふたを開けてみると、1月に予備選がはじまって以来、初戦のアイオワ州こそ、テッド・クルーズ上院議員の後塵を拝したものの、トランプ氏は快進撃を続けている。
3月1日のスーパー・チューズデーでも、トランプ氏は11州のうち7州で勝つという好成績を収め、予備選のトップランナーの地位を確立し、3月5日にカンザス、ケンタッキー、ルイジアナ、メインの4州で行われた予備選でも、ケンタッキーとルイジアナの2州で勝利した。3月15日にはフロリダ州やオハイオ州のように、他の候補者の地元で予備選が行われるが、これらの州でもトランプ氏の優勢が伝えられる。つまり、当初の予想を大きく裏切る形で、トランプ氏が共和党の大統領候補に指名される可能性がかなり現実味を帯びてきているのだ。