2024年11月24日(日)

読書

2016年6月4日

「自分はやったぞ!」という無敵感こそが、次のダイブに繋がる

 ―― 自分を褒めるところまでがひとつのパッケージということですか?

加藤 そうです。成功した自分を認めてあげることで、ダイブした結果が完結するのだと思います。また、第三者に承認されることで自信もつくし、自己肯定感も高まります。そうすることで、次はもっと大きい挑戦ができるんです。自らリスクの中にダイブして成功した後には、自分の全身に血が逆流するような高揚感があって、ランナーズハイみたいな感覚になるんです。自分が無敵になった感じがするんですよ。なかなか言葉で伝えづらいのですが、この感覚を体験するところまで、ダイブした人に感じてほしいと思うんです。

―― 無敵感、ですか。

加藤 はい。僕は、グーグルにシャフトを売却したときも、初めてM&Aをしたときも、この感覚をおぼえました。「この感覚はなんだろう?肩で風を切るなんてものじゃ表現しきれないような、この爽快感はなんなんだろう?」と思っていたのですが、以前『逆転!』という本を読んだ時に、この感覚が何なのか、すごく腑に落ちたんですよ。

―― マルコム・グラッドウェルの『逆転!強敵や逆境に勝てる秘密』という本ですね。

加藤 それです。『逆転』は、「小さなものが大きなものを倒すには」という文脈で探していた時に見つけた本でした。最後のほうに記してあった引用を読んだ時に「これだ!」と感じたんですね。普通は、リスクの中に飛び込んでいくと、たとえ勝ち残ったとしても燃え尽きてボロボロになってしまうように思うじゃないですか。ところが現実はまったく反対で、リスクを乗り越えるたびに、想像できないようなパワーや元気が湧き出てくるのです。ダイブすることに対して、失敗するかもしれないという恐怖を乗り越えて成功する感覚、死ぬと思っていたけど死ななかったというような時の感覚は、ほんとうに想像できないような新たな力を呼び込むのです。ここまでを体験すると、ひとつのパッケージとなって、次にさらなる大きなリスクへダイブしていけるんです。

―― 今回の著書に記されていたシャフトのエピソードにも、日本のファンドに出資を断られ、日本での展開が絶望的になりながらも、最終的にはグーグルに売却して成功をおさめる、という逆転がありましたね。

加藤 あの時、僕は確率に賭けるのではなく、可能性に賭けたんです。確率としては、ベンチャーが経済的に成功をおさめるのは難しいのかもしれない。それでも、可能性に賭けて思い切りダイブしたのです。その結果、グーグルに売却することができました。グーグルに売却したあと、僕はとても気持ちが高揚し、さらなる自信をもつことができました。だから、今はシリコンバレーでさらなる挑戦ができているし、あるいはシャフトの可能性に賭けられたこと自体も、それ以前のM&Aの成功や、ベンチャーでの経験が、熱量をもって支えてくれていたわけです。この感覚は、覚悟を決めてダイブをした人にしか得られない世界だと思います。いま乗り越える局面に直面しているひとに対して、そういう世界があるのだということを、この本を通して伝えたかったんです。

(編集・構成 マツオカミキ)

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