同司令官はイランの海外戦略の黒幕的存在で、重要な作戦には自ら前線で指揮を執るなどその神出鬼没ぶりで知られる謎多き人物だ。ファルージャは北部の第2の都市モスルと並ぶISのイラクの拠点の1つ。司令官の存在はそれだけイランがファルージャの奪回を重要視していることの表れでもある。
しかし米国はファルージャ奪回作戦にイランの影響力が強まっていることに危機感を深めている。ファルージャは元々、イラクでは少数派のスンニ派教徒の町だ。しかし奪回作戦の主力はシーア派教徒であり、過去に繰り返されたようにスンニ派住民が虐殺される懸念もある。
シーア派教徒は、ファルージャの住民が同じスンニ派であるISへの協力者と見なしがちだ。民兵軍団の司令官の1人は「この町に愛国者は1人もいない。ガンを根絶する好機」と発言している。このため米国はイラク側に対し、住民の虐待をしないことを条件に空爆支援を行うと通告した。
ISから垣間見える弱気の姿勢
こうしてISが一段と窮地に立たされている中、ISの公式スポークスマンで指導者バグダディの側近でもあるモハメド・アドナニは先週、「たとえラッカを失うようなことがあっても、われわれを壊滅させられない」と述べ、追い詰められているという弱気の姿勢を垣間見せた。
IS対策を担当する米国のマクガーク大統領特使は最近、「彼らの余命は長くはない」とツイートした。しかしISは次第に自暴自棄の作戦に傾倒し始めており、奪回作戦をけん制するためシリアとイラクは無論、隣国のトルコや欧州でさらにテロを激化させるのではないかとの懸念が急速に強まってきた。
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