2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年6月9日


プルトニウム保有量の増加が核不拡散の観点から国際的な関心を呼んでいます。韓国は昨年漸く妥結した米韓原子力協定改定交渉で日本と同様の再処理活動につき米国の同意を執拗に要求しましたが、米国は認めませんでした。中国は自ら日本のような再処理工場建設を仏と交渉しつつ、日本は大量のプルトニウムを保有しているとして、対日批判と宣伝を強めています。

 この記事は、プルトニウムは民生用原発に使用するには経済的でないとして、核不拡散の観点から、日本、中国、韓国が共同してプルトニウム製造停止を決めるべきだと提案しています(アジア=米プルトニウム・ポーズ構想)。この構想を仲介、支援するため、米は自国のプルトニウム工場の建設中断を実行すべきだとしています。

日中韓の思惑の違い

 しかし、ことはそう簡単ではありません。関係国がプルトニウムに置く重要性がそれぞれ違うからです。我が国は専ら原子力エネルギー確保の観点からプルトニウムを捉えていますが、韓国はナショナリズムと対北朝鮮対応など防衛政策の観点からそれを捉えています。中国は、核兵器保有国としてその能力強化に努めており、国防政策上の考慮が強いでしょう。米国は核不拡散からの考慮に重きを置いています。それゆえ、日中、日韓を同列に議論するのは困難です。また、やるとしても地域規模ではなく世界的規模でやるべきものではないでしょうか。そうであれば、世界のプルトニウムの保有量の最小にするため、それぞれの立場から、できることを注意深く実施していくべきでしょう。

 その意味で、我が国が一定量のプルトニウムを米国に移動していることは意味のあることです。2014年のハーグ核セキュリティ・サミットの際、日本は米国との間で日本原子力研究開発機構のプルトニウムの撤去に合意し、今年4月のワシントンでの会合に際しては京都大学の実験装置の高濃縮燃料を米国に撤去することに合意しました。

 米議会は核不拡散問題に敏感です。現在の日米原子力協定は2018年7月に30年の有効期間を満了するので、改定交渉をしなければなりません。プルトニウム問題につき米議会の動向を注視していく必要があります。
 


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