スペイン人記者の解放を参考に
その際に参考になるのは、10カ月ぶりに人質生活から解放されて5月8日に帰国したスペイン人記者3人のケースだ。3人は安田さんと一時的に一緒に拘束されていたと伝えられており、スペイン政府から事情を聞くのはもちろん、解放された記者らからの直接聴取も欠かせない。
特にスペイン政府はトルコとカタールが3人の解放に協力したことを明らかにしており、どこをどうつつけば、響くのかを知る上で、大いに参考になるだろう。トルコ紙などによると、スペインは1人につき、370万ドルの身代金を支払った、という。
日本政府は昨年の後藤健二さんらの人質事件では、身代金の支払いを拒否したが、1999年の中央アジア・キルギスの邦人人質事件では3億円の身代金を払った過去もある。政府内には、安田さんについて、警告を無視して自ら危険地に入った、という自己責任論が根強い。しかし、紛争地の実態は、安田さんのようなジャーナリストの存在がなければ分からないことも多い。
「ヌスラ戦線」は2012年の設立当初、ISの関連組織という位置付けだったが、ISが組織を吸収しようとしたことに反発して袂を分かった。シリア内戦では反政府勢力の一翼としてアサド政権軍と交戦しており、反政府勢力から強力組織として頼りにされている。
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