ラマダン・テロに呼応か
捜査当局はISとの関係が確定的ではないものの、マティーンがISの過激思想に次第に傾倒していき、イスラム教徒の宗教心が高まるラマダン(断食月)の時期になって一気に犯行に駆り立てられたのではないかとみている。その意味では“ホーム・グロウン(母国育ち)”の一匹狼型テロだろう。オバマ大統領は「母国育ちの過激主義」と呼んだ。
一匹狼型テロは、組織型テロとは違って、犯行前に謀議に集まったり、ネットや電話で連絡を取り合うこともない。このため事前に探知するのが非常に難しい。ボストン・マラソン爆破や、昨年12月のカリフォルニア州・サンバーナディーノの乱射テロ(14人死亡)もこの種のテロだった。
とくに今回の事件は、サンバーナディーノの乱射テロとの共通項が多い。乱射テロを起こした夫婦は、犯行時刻にフェースブックでISに忠誠を誓う書き込みをしたり、メッカに巡礼に行っているなど犯行の動機や過激化する過程が似通っている。
ISの海外作戦の元締めで、公式スポークスマンのモハメド・アドナニがラマダンに当たって声明を発表し、「住んでいる地元でテロを起こせ」などと呼び掛けたことがマティーンの犯行に大きな影を落としている疑いが強い。
特に今回はゲイのナイトクラブが狙われており、クラブが標的になった背景には、同性愛者を異常なまでに忌避するISの思想がありそうだ。ゲイの集会やパレードが予定されているワシントンやニューヨーク、ロサンゼルスなどでも新たなテロが起きるのではないかと恐怖感が広がっている。
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