前途多難、歩き始める前から暗雲立ち込めて……
こうして結局荷物の重量は歩き始めの時点で食料・水を含めて12kgオーバー。
さらに想定外であったのはルートマップ、ガイドブックである。日本では入手に時間を要し、かなり割高である。ブログによると巡礼宿、ホステル、ホテルなどの宿泊施設は数十kmに数軒あるかないからしいので詳細案内本を現地調達することにした。
出発地のル・ピュイの巡礼者支援センターで地図付きのガイドブックを購入しようとしたがあいにく英語・スペイン語版は売り切れ。しかたなく仏語版を買った。
英語・スペイン語なら何とかなるが仏語は学生時代以来のご無沙汰。ル・ピュイから3週間くらいの区間では森林や山道や放牧地が大半で地元の人の姿がみえず、日中に出会う巡礼者も数人しかおらず仏語のガイドブックでは不安であった。
地図の凡例が複雑すぎて判読できない。水場や売店や避難所の有無や種類・注意事項が分からないのである。たまに地元の農夫等に凡例の意味を確認するのだが彼らの乏しい英語力と私のお粗末な仏語では却って混乱する結果となった。
泣きっ面に蜂……
歩き始める前夜、4月24日はLe Puyのユースホステルに宿泊。夕食は買ってきたフランスパンにサラミとチーズを挟んでサンドイッチにした。ガブリと勢いよく食らいつくとガリッと異音。なんと前歯の差し歯が取れてしまったのである。
数日後に巡礼道沿いの町で歯医者(danteste)に寄ったが美人の女医さん曰く「これは日本の先進的接着技術なので欧州の接着剤では仮留めしかできない」と流暢な英語でご託宣。80ユーロも支払って接着してもらったが、その日の午後にビスケットを食べたら案の定、接着したばかりの差し歯が取れてしまった。爾来帰国するまで前歯は欠けたまま。記念撮影でうっかりスマイルすると間抜け顔となってしまうのであった。