金融化した石油市場
第二の節目は、石油市場の金融化である。
1980年代後半、ニューヨークとロンドンに石油先物市場が生まれ、やがて、先物市場が日々宣言する原油先物価格が、現物価格を支配するようになる。リーマンショック後の石油先物市場と現物市場での、急激な価格崩壊の物語は繰り返さない。現物原油の売り手たるOPEC産油国は、先物市場のプレイヤーに価格決定権を譲ったのだ。
未来のOPECと原油価格
さて、OPECは将来、どうなってゆくのだろう。
日経記事は「政治的に敵対するサウジとイランも、相場の回復基調に水を差すことを懸念し、対立が表面化するのを回避したとみられる。米モルガン・スタンレーのアダム・ロングソン氏は「対話は建設的で、最近の会合で見られた内部対立はなかった」と評価し、OPECは市場への影響力を失っていないとみる」と書く。
この観察でよいのか。OPECカルテルが原油需給調整能力を持ち得ている故、国際市場での価格決定権力を維持している……これでよいのだろうか。
ヴィム・トーマス氏は、シェルグループの首席エネルギー顧問官。最近、OPECの中長期的未来像について以下のように話している。
OPECは13か国が加盟する国際機関。組織運営の形態には、いろいろな可能性があろう。
第1の形態は、加盟国が、それぞれの立場を理解尊重しつつ、全体目的すなわち国際石油市場への影響力保持のために協調している。この運営形態が現れるのは、石油需要が堅調で、シェールオイルの生産量が予想よりも伸びない場合で、OPEC総会は、つど適切な需給調整策を実施する。イラク、イランとロシアの生産政策のコントロールが鍵。この運営形態を「NewPEC」と呼ぼう。石油価格は、“熱すぎず、冷めすぎず、ちょうどよい”、つまり“ゴルディロック”相場で推移するだろう。