第2の形態は、世界経済の低成長がつづき石油需要が鈍化する場合。しかもシェールオイルは、生産性が向上して低価格に耐えている。サウジは、イラク、イラン、ロシアそれにシェールオイルとも生産・販売シェアを競いつづける。これを「NoPEC」と呼ぶ。低位の価格レベルがつづき、探鉱開発投資は低調。世界的に原油増産余力がなくなってゆく。今や、金融化した国際石油市場では、供給危機が格好の材料になる。だから相場の変動幅はおおきくなる。
第3は、イランとサウジの政治対立が深刻化し、中東域が不安定化する場合。サウジ国内が、油田地帯のシーア派の騒擾で不安定化、サウジは増産余力を失ってゆく「WarPEC」が出現する。原油価格は高止まりし、石油代替エネルギーへのシフトが加速する。
総括
OPECの中長期未来の姿を「NewPEC」、「NoPEC」、「WarPEC」と三様に想像してみたら何が判っただろうか。
まず、シェールオイルの生産量、とりわけ北米以外の地域のシェールプロジェクトの今後の成否が、OPEC生産量に大きく影響するだろう。従って、OPECはシェールオイルプロジェクトの経済性を観察しながら価格政策を打ち出すことだろう。サウジの原油生産コストは十分に低い。が、加盟国には価格下落に耐えられない国も出てくる。どうやら価格変動の大きな世界になるのではないか。
トーマス氏は4月下旬に来日し、このような話を、安倍首相と黒田日銀総裁らにレクチャーしたのだ。
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。